
握手するヤナイCEO、島田社長
世界最大のジェネリック医薬品(GE薬)企業であるイスラエルのテバ・ファーマスーティカル・インダストリーズは16日、GE薬メーカー国内第3位の大洋薬品工業を370億円で買収すると発表した。テバが大洋薬品の発行済み株式57%を取得し、子会社化する。最終的には100%の株式取得を目指す。買収金額は総額で約1040億円となる見通し。国内GE薬大手の大洋薬品がテバの傘下に入ったことで、遅れているGE薬メーカーの再編が加速しそうだ。
テバは、2008年9月に興和と合弁会社「興和テバ」を設立し、日本のGE薬市場に参入。15年に売上高1000億円の達成を掲げ、積極的な事業拡大を図ってきた。さらに今回、国内GE薬第3位の大洋薬品を直接買収することで、高い生産能力を獲得し、日本市場の成長取り込みを加速させたい考え。
都内で記者会見した大洋薬品の島田誠社長は、戦略的提携に至った背景について、「テバは世界の国々で成功事例を持っており、将来的な成長路線を考えた場合、大きな方向転換をするには、今しかないと考えた」と説明。「世界トップのGE薬メーカーと組み、チャレンジングで確実な成功事例を作りたい」と意欲を示した。
ただ、テバが日本で展開するGE薬事業は、合弁の興和テバと買収した大洋薬品が存在することになる。シュロモ・ヤナイCEOは、「大洋薬品との提携は、興和テバと違ったイニシアチブになる」との考えを示したが、両社の存続方法については、「最善の方法について現在話し合い中で、まだどうするかは時期尚早」と明言を避けた。今後、テバは株式取得を進め、大洋薬品の100%子会社化を目指すが、引き続き社長には島田氏が就任する予定。ヤナイ氏は「既に大洋薬品はビジネスモデルを確立している。テバは、それを支援することになる」との方針を明らかにした。
その上で、「大洋薬品の買収で、日本の売上高1000億円という目標を前倒しで達成できる」と強調。「国内GE薬市場の中で、われわれが大手になることは有利。今後も合理性のある動きならば、さらなるM&Aもあり得る」との考えを示した。
国内専業大手、再編劇に狼煙
国内GE薬市場に大手新薬メーカーなどが相次いで参入する中、再編が遅れる専業メーカーの動向が注目されていた。ただ、これまで大きな動きは見られず、大手の沢井製薬が中堅新薬メーカーのキョーリン製薬ホールディングスに買収提案を行ったものの、最終的には失敗。こうした中でのテバと大洋薬品の提携劇となった。
島田氏は記者会見で、「勝つための戦略は他社より先んじたいと思っていた」と心情を述べた。結果的に専業大手の中では、不祥事を経て、成長路線に復帰を急いでいた大洋薬品が生き残り戦略に先手を打った。今回の買収では、興和テバと大洋薬品の扱いをはじめ、テバの考え方について詳細は語られなかった。しかし、いよいよ国内専業大手の再編が幕を開けたことだけは確かだ。