国内大手製薬企業4社の2011年3月期決算(連結)が13日、出揃った。武田薬品とアステラス製薬は、円高と米国特許切れが響き、減収減益。2010年問題が表面化したエーザイも、主力品が大きく落ち込み、12期ぶりの減収。しかし、利益面は収益性向上によって増益を確保した。一方、第一三共は、印子会社ランバクシーが貢献し、増収増益と好調が目立った。大手各社で主力品の特許切れに直面する決算となったが、アステラスは影響がピークを迎えた格好。12年3月期は各社とも業績落ち込みが一段落する模様だが、武田とエーザイの正念場はこれから。好調な第一三共も、合成抗菌剤「レボフロキサシン」の米国特許切れが足元に控えており、今後も一進一退が続くことになる。
売上高を見ると、国内トップの武田は、主力の2型糖尿病治療剤「ピオグリタゾン」が1・2%増、米ミレニアム社の多発性骨髄腫治療剤「ベルケイド」が10・0%増と売上を伸ばし、国内売上高も5・4%増と好調だったが、米国で後発品が浸透する消化性潰瘍治療剤「ランソプラゾール」が38・2%減と大幅に減少。円高のマイナス影響も大きく、全体では3・2%の減収となった。
アステラスは、グローバル製品の過活動膀胱治療剤「ベシケア」が5・3%増、抗真菌剤「ファンガード/マイカミン」が16・1%増と伸長。買収した米OSIの売上も寄与したが、米国で後発品発売が影響した主力の免疫抑制剤「プログラフ」が12・9%減、排尿障害改善薬「ハルナール」もバルク・ロイヤリティ収入が激減し、41・6%減と大きく落ち込み、2・1%の減収となった。
エーザイは、主力のアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」に米国特許切れが直撃し、10・1%減と二桁減。抗潰瘍剤「パリエット/アシフェックス」も米国で競合ブランド品の後発品浸透が影響し、7・5%減と落ち込み、4・3%の減収となった。
これに対し第一三共は、合成抗菌剤「レボフロキサシン」が輸出減の影響で20・7%減となったが、主力の高血圧治療剤「オルメサルタン」は1・4%増、ランバクシーが17・3%増と大きく貢献し、1・6%の増収を確保した。
11年3月期は、エーザイにも2010年問題が直撃。第一三共を除く3社が減収に落ち込んだが、好調な第一三共も「レボフロキサシン」の米国特許切れを控えており、マイナス影響が広がることになりそう。
一方、営業利益を見ると、武田は売上総利益の減少が響き、12・6%と二桁減益。アステラスも減収に加え、導入一時金など研究開発費が膨らみ、36・1%の減益となった。
これに対し、第一三共は、ランバクシーの増収に加え、共同開発費など販管費が減少し、27・9%と二桁増益。12期ぶりの減収となったエーザイも、売上総利益の減少を収益性向上でカバーし、30・9%増と大幅増益を確保。営業利益は過去最高となった。
12年3月期は、2010年問題が本格化するエーザイを除く3社が増収予想。また、利益面も武田とアステラスが増益予想と、主力品の特許切れ影響は一段落する模様。一方、第一三共は研究開発費と販管費の増加、エーザイは売上減が響き、減益を見込む。ただエーザイの最終利益は、為替差損が改善し、増益を確保する見通しだ。