塩野義製薬の手代木功社長は9日、大阪市内で開いた決算説明会で、低迷した米国子会社「シオノギINC」の業績改善について、「人心の統一と目標の再設定によって、今年度は赤字脱却できる」と宣言した。また、東日本大震災で被災した金ヶ崎工場について、「4月12日から順次生産を再開しているが、6月下旬から7月上旬にかけて、全面的に復旧する予定」との見通しを述べた。
昨年度、赤字を計上したシオノギINCの業績悪化を受け、事業構造改善費用など特別損失(約150億円)が発生。東日本大震災に伴う災害損失(30億円)と共に、10年度決算の大きなマイナス要因となった。シオノギINCは、同社が2008年9月に買収したサイエル社を基盤とするもので、米国市場の環境悪化に伴い、第1四半期の業績が著しく低下し、事業立て直しが迫られていた。
手代木社長は、具体的な再建策として、「アトランタ州とニュージャージー州のオフィスを3月31日付で統一し、営業のトップに元サノフィ・アベンティスの米国責任者を採用した」と説明。「昨年、一昨年に発売した二つの新製品に加え、導入品1品目を柱に、既存製品の販売維持を図りながら赤字脱却を図りたい」と語った。
その上で、シオノギINCの位置付けは変わらないとし、海外戦略品の中でも、特に先行している抗エイズ薬「S/GSK1349572」を、「12年に承認申請し、13年に米国を皮切りに販売する」と、見通しを示した。さらに、これに続く海外戦略品として、インスリン抵抗性改善薬「S-707106」、末梢性オピオイド受容体アゴニスト「S-297995」を挙げ、「これらの製品は、クレストールの特許が切れる16~17年にかけての上市を見込んでいる」とした。