厚生労働省は5日、肺癌治療薬のイレッサをめぐる訴訟で、国の一部賠償責任を認める東京地裁の3月23日判決について、「事実認定や法律判断に妥当とは言い難い問題点がある。上級審の判断を仰ぐ必要がある」として、東京高裁に控訴した。
細川律夫厚労相は談話を発し、[1]承認時の添付文書の記載が不十分な注意喚起の仕方だったとは言えない[2]間質性肺炎を、「重大な副作用」欄ではなく、「警告」欄に記載すべきと判断するほどの科学的知見は、承認時に得られていなかった--と、判決に異議を唱えた。大阪地裁では、国に違法性がないとする判決が出ており、東京地裁の判断と大きく異なることも指摘した。
ただ、「癌患者のための施策を推進していく国の決意を、何ら変更するものではない」とも強調し、インフォームド・コンセントの徹底、医薬品安全対策の強化、抗癌剤副作用死救済制度の検討などに取り組む考えも示した。
東京地裁判決については、製造販売元のアストラゼネカも3月30日に控訴している。東京地裁判決の「承認時のイレッサの添付文書は、副作用欄の記載方法が注意喚起として不十分だった」との指摘に対し、アストラゼネカでは「記載は適切であったと考えており、判決内容には承服できない」としている。
記載が適切であった理由としては、[1]承認時までに得られていた情報に基づき、時として致死的になり得ることを意味する「重大な副作用」として間質性肺炎を添付文書に明記している[2]イレッサによる間質性肺炎は、現在でこそ、承認後の多数の臨床実績等で特に注意すべき副作用と判明しているが、承認当時には、承認用量における治験で間質性肺炎の発症例は一例もなかった‐‐を挙げている。