文部科学省では、今後の科学技術の発展や新産業の創出につながる新技術を産み出すことを目的に「戦略的創造研究推進事業」を進めているが、このほど、2007年度の戦略目標として4目標を選定した。今後は、これらの目標を科学技術振興機構(JST)に通知する。通知を受けたJSTでは、戦略目標の達成に最適な研究領域、研究総括を選定し、4月上旬から研究課題の公募を開始する予定だ。
戦略的創造研究推進事業は、国の科学技術政策や社会・経済ニーズを踏まえて文科省が定める戦略目標の下に、JSTが研究領域や研究総括を設定し、公募等によって産学官から優れた研究者を結集して戦略目標の達成に向けた研究の推進を行う。
07年度の戦略目標は、[1]精神・神経疾患の診断・治療法開発に向けた高次脳機能解明によるイノベーション創出[2]高信頼・高安全を保証する大規模集積システムの基盤技術の構築[3]新原理・新機能・新構造デバイスのための材料開拓とナノプロセス開発[4]社会的ニーズの高い課題の解決へ向けた数学・数理科学研究によるブレークスルーの検索””の四つ。
「精神・神経疾患の診断・治療法開発に向けた高次脳機能解明によるイノベーション創出」については、脳科学研究分野で、基礎研究で得られた疾患関連遺伝子の知見などを医療に結びつける研究開発プロジェクトが、日本でではほとんど行われていない点を指摘。その一方で、欧米では脳科学の基礎的な知見を活用した研究開発が活発となっており、激しい国際競争が展開されていることから、他の分野に優先して実施すべきだとしている。
その上で、認知症・うつ病は高齢者の主要な精神疾患であるとし、世界に例のない高齢化社会を迎える日本としては、世界に先駆けて戦略目標として集中的にこれらの研究課題に取り組む重要性があると指摘している。