東日本大震災の発生を受け、本紙は製薬各社の被害状況をまとめた。各社とも被災地域の工場で一部建物が損傷し、復旧のメドが立たないケースも見られているが、人的被害はほとんど発生していない模様。
武田薬品は、被災地域の営業拠点について現在調査中で、状況不明としている。報告されている物的・人的被害はない。
アステラス製薬は、高萩工場(茨城県)と西根工場(岩手県)が現在稼働停止中。設備・装置を確認している状況。ただ、物流センターや医薬品卸に在庫があるため、供給体制に問題はないという。交通機関を確認しているという。人的被害は生じていない。
第一三共は、館林・平塚・小名浜の各工場で壁や床、天井にひび割れが発生。配管にも損傷が見られた。特に最も被害の大きい小名浜工場は、断水・停電の被害を受け、現在状況を調査している。稼働状況も不明。人的被害は生じていない。
エーザイの鹿島工場が断水による被害を受けた。今週の操業は停止し、来週から再開する予定。また、仙台コミュニケーションオフィスの営業人員数名と連絡が取れない状況にある。
大塚ホールディングスは、子会社である大塚倉庫の仙台工場と浦安工場で、医薬品などの荷崩れが発生。現在被害状況を確認中。また、イーエヌ大塚の花巻工場では余震と停電の危険性があるため、現在操業を停止している。人的被害は発生していない。
塩野義製薬の金ケ崎工場(岩手県胆沢郡金ケ崎町)は、工場の稼働が止まった。設備の破損など被害が出ているが、その規模は不明。復旧のメドも未定となっている。対象地域の従業員の無事を確認。人的被害は出ていない。
大日本住友製薬は、東日本の物流をカバーする東京物流センター(埼玉県)の配送が不能となった。14日から大阪物流センター、神戸物流センターより東日本に向けて製品を発送する。人的被害は発生していない。
田辺三菱製薬は、関東エリアにある各工場への影響を現在確認中。人的被害は生じていない。
協和発酵キリンは、高崎、三島、町田の各工場は停電もなく、人的被害も発生していない。
中外製薬は、現在調査中としているが、人的・物的な被害は出ていない。
大正製薬の仙台支店で建物(窓ガラス)が破損。仙台物流センターでも建物が破損し、復旧に時間がかかる模様。また、大宮工場で建物の一部が破損したが、大宮物流センターと羽生工場の生産に支障はないとしている。人的被害は発生していない。
久光製薬の宇都宮工場で天井が崩壊した。現在操業を停止し、安全確認中。復旧のメドは未定という。また、現在従業員3人が避難所に待機中だが、安否は確認されている。
科研製薬は、工場と研究所に被害は見られず、営業所と支店の物的被害については調査中。人的被害は生じていない。
持田製薬は、子会社である持田製薬工場の大田原本社工場で製造設備が損傷。詳細は調査中で、現在操業を停止しているという。人的被害は発生していない。
ゼリア新薬は、筑波工場の建物に損害が生じたが、設備に問題はないとしている。操業再開のメドについては未定。その他の物的・人的被害は生じていない。
あすか製薬は、いわき工場の建物が一部損傷した。機械・設備の点検後に、操業再開時期を判断する予定。
日医工は、山形県と埼玉県の生産工場で一部損傷が発生した。復旧には1~2週間程度かかる見通し。
沢井製薬は、生産工場の関東工場(千葉県茂原市)で地震発生時に一時停電が生じたが、その他の設備・機器の損壊などの被害はない。現在、確認作業を進めている段階。大阪本社内に危機対策本部を設置して対応している。
東和薬品は、山形第一工場(山形県上山市弁天)での人的・物的被害はない。地震発生直後から停電のため工場全体が稼働を停止中。電力供給復旧時期が不明で生産活動再開の目処は立っていない。また、山形配送センターは停電通信状態・交通事情の悪化等により、今後の出荷に影響が出る可能性がある。
小林製薬は、子会社製造工場の仙台小林製薬(宮城県黒川郡大和町)の一部生産ラインで被害が発生。操業停止状態で復旧の見込みは立っていない。今後、原資材料の調達で影響が出てくることが予想される。現在本社に危機管理本部を設置し、復旧に取り組んでいる。
なお、参天製薬、日本新薬、キョーリン製薬ホールディングス子会社の杏林製薬、キッセイ薬品については、人的・物的被害は生じていない。