昨年、大阪府や奈良県で実施された、今年度登録販売者試験の受験申請者のうち、延べ20人が受験に必要な実務経験証明を不適切に作成・申請し、両自治体から受験願書を取り下げさせられていたことが分かった。
大阪府や奈良県などの薬務課によると、受験者の実務経験証明を発行していたのは、配置薬販売業者の日本配薬(本社東京都)。大阪府が昨年9月に実施した、登録販売者試験の受験申請者書類確認の過程で、同社が発行する実務経験証明書に疑義が発覚した。
同社への事情聴取を行ったところ、実務従事時間の内容に不自然な実態があったことなどが判明。大阪府は願書取り下げ者のうち、既に奈良県の試験に、併願申請していた受験者がいたため、奈良県に通報。大阪府は該当者13人(うち奈良県との併願5人)を試験前に、また試験が終了していた奈良県は合格発表前に7人(うち試験合格者4人)の受験者に、願書出願を取り下げさせた。
奈良県薬務課は、「日本配薬は従業員6人の規模にもかかわらず、従事者としての使用契約を334人と交わしていた」とし、実務経験証明の管理監督は実際上、不可能な状況にあったと指摘している。また、従業者の大半が、整骨院等の開業者組織である「全国柔整鍼灸協同組合(全柔協)」(大阪市)の組合員で、大阪府や奈良県で受験申請を取り下げた延べ20人は、全員が全柔協組合員だったという。
全柔協、不正関与を否定
9日には、全柔協が受験申請者に対して、実務経験に必要な時間の水増しなどをアドバイスしたとされる一部報道を受けて、大阪市内で記者会見を開き、理事長の岸野雅方氏は、そうした事実について否定した。
岸野氏によると、実務経験証明の根拠となる日報、月報などの書類は、組合員申請者の書類を全柔協が取りまとめ、日本配薬に送付し、日本配薬側が確認し、実務経験証明書を発行するという流れになっていた。
昨年9月以降、大阪府など各府県から書類不備を指摘された日本配薬が、全柔協に対し再度確認を要請。同社はその段階では、「1カ月に1度も在庫管理をしていない例や、全柔協が実施した講習会の時間を加算しているケースもあり、改善を求めた。その結果、14人が日本配薬を通じ、受験申請を取り下げる形をとった」とし、実務経験の水増しなど、書類不正への関与を一切否定した。
岸野氏は、登録販売者試験について、「資格を取得するれば、鍼灸師、柔整師も薬の取り扱いが可能になるなど、業権拡大につながると考え、2009年7月から、登録販売者試験の受験を組合員に勧めてきた」と説明。結果、10年度の登録販売者試験では368人が受験申請(受験した者は256人)し、207人が合格したという。また、全柔協として1月19日に厚生労働省医薬食品局総務課を訪れ、過去の取り組みや、組合員に適正な指導を行ってきたことなどを説明しているとした。
一連の実務経験不備に関しては、奈良県も9日付で、日本配薬が発行した実務証明書による受験出願者は38人(うち願書取り下げ者は7人)だったことを発表。取り下げた7人は、▽1軒で7~8時間の滞在▽業務日報の顧客訪問時間を大幅修正▽月80時間未満の勤務月があった--など不備があった。
日本配薬、全柔協との関係打切る
奈良県は、昨年11月に日本配薬代表者を事情聴取し、同社宛に警告書(管理不備と偽造証明)を発出した。虚偽証明に至った経緯として日本配薬は、「従業員6人の会社が、多数の従事者について、簡易な書面確認で証明書を発行したため、不適切な証明が生じた」と説明したという。
また、日本配薬代表の奥田康夫氏は、本紙の取材に対し、同社として47都道府県で配置販売業の許可申請をしていることから、全国の全柔協組合員と使用関係を結び、配置員の証明を行っていたという。
一方、結果的に偽造証明発行に至ったことについては、「管理者として指導監督できなかった責任はあり、弁解の余地はない」と語った。既に、今年1月までに関東や関西の一部地域を除き、配置販売業の廃止届けを提出。全柔協との関係も打ち切っている。
全柔協の岸野氏は、「この2年間は薬剤師の卒業がないので、規制緩和で薬もコンビニで販売できるようになる。約15万軒のコンビニの人数分の登録販売者を確保するまで試験は簡単。だからチャンス」と、組合員向けに説明していたという。一方、実務経験証明のあり方について、日本配薬1社で約400人分を対応させようとしたことについて、「無理があったとは思わない」との見解も示している。