13年度から公表
日本製薬工業協会は2日、医療機関や医師等に支払った金銭の情報を開示する「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を公表した。研究費、臨床試験費や寄付金、講師への謝礼、講演会費用などが対象となる。研究費は年間総額を、寄付金や講演会費等は大学・医療機関名と個人名までを開示し、2012年度分の支払いを13年度から公表する。指針策定を受け、会員各社は透明性に関する企業方針を表明した上で、13年春の決算終了後、開示に踏み切る見通し。
製薬協では、2年前から透明性指針の策定に着手。タスクフォースを立ち上げ、議論を進めてきた。昨年3月に成立した米国の医療制度改革法では、サンシャイン条項が定められ、製薬企業が医療機関等に支払う資金の情報公開を義務づけた。オーストラリアや英国などでも開示の動きがある。
こうした世界的な潮流を受け、日本医学会も利益相反指針を策定。研究者に金銭受け取り情報の開示を求める中、製薬協としても指針策定で呼応することにした。
今回の指針では、記載が望ましい公開対象に研究費開発費等、学術研究助成費、原稿執筆料等、情報提供関連費、その他費用を挙げている。
研究費等に関しては、共同研究や委託研究、臨床試験、製造販売後臨床試験等で提供した資金を年間の総額で開示する。
また、学術研究助成費に関しては、奨学寄付金や財団等への一般寄付金、学会寄付金・共催費について、大学や教室名、学会名と金額を公表。原稿執筆料等は支払った講師謝礼や監修料、コンサルティング業務委託費等について、個人名まで開示する。
さらに、自社製品の情報提供目的で行った講演会、説明会の費用等については年間の件数と総額、その他の接待費等は、年間の総額を開示することを求めた。
都内で開いた記者会見で、透明性タスクフォースの福原庸介委員長は「今回の指針は国際的な水準から見て遜色のないものになっている」とした上で、「12年度分からの情報開示に向け、医療機関や医療関係者に了解が得られるよう、まず啓発活動を十分に行っていきたい」と語った。 ただ、今回の指針では、患者団体への資金提供は開示対象となっていない。川邊新専務理事は、「海外では開示しているケースもあり、引き続き議論していく」との見解を示した。また、企業から財団への一般寄付金は、間接的に研究費に流れているケースも見られているが、これについて「把握できる資金は公開していくことが望ましい」とした。
今後、会員各社は、情報公開に向けた手順の策定等に着手。医療機関等との関係透明性に関する企業方針を表明した上で、13年度から自社Webサイト等を通じ、公開していくことになる。
なお、透明性指針の公開に当たって、欧州製薬団体連合会(EFPIA)ジャパンの加藤益弘会長は、「製薬協のガイドライン策定を歓迎すると共に、EFPIAジャパンの会員各社もガイドラインに基づき、より透明性の高い企業活動を推進していきたい」との声明を発表した。