日本医師会は7日の定例記者会見で、医療提供体制の国際比較についての調査・分析結果を公表した。それによると、日本の経済力から判断すると、医師数は非常に少なく、1人当たりGDPが一定水準にある国の中で、1000人当たり医師数は日本が最下位だった。日医は、経済力にあった社会保障制度にするため、国へ医療資源確保の財源的手当てを検討することを求めた。
調査では、(1)経済力(GDPを指標とする)からみた場合に、日本の医療資源が本当に過剰であるのか(2)高齢化に対応した医療提供体制が整えられているのか””を検証する目的で調べられた。方法は、「OECDヘルス・データ2006」を用いて、1996年、04年の医療提供体制と総医療支出(国民医療費に介護保険サービス費、健康・予防にかかわる費用、管理コスト等を加えたもの)などを、OECD加盟国(日本を含めて30カ国)間で比較した。
分析によれば、日本の対GDP比総医療費支出は、96年は7.0%で29カ国(当時の加盟国)中で21位、04年は8.0%で30カ国中21位だった。日医では「低医療費政策によって日本は長年、医療費後進国から脱することができずにいる」としている。また04年で、1人当たりGDPが平均(3万0242ドル)以上でありながら、1人当たり総医療支出が平均(2529ドル)以下なのは、日本、イギリス、フィンランドの3カ国だけだった。
また、日本の人口1000人当たり医師数は約2.0人であり、1人当たりGDPが平均以上の国の中で最下位。96年から04年を比較すると、日本では高齢化が著しく進展したにもかかわらず、人口1000人当たり医師数は微増にとどまった。一方で、もともと人口1000人当たり医師数が平均(3.0人)以上であったフランスとドイツは、高齢化の進展に伴ってその数がさらに増加した。高齢化率にほとんど変化がないアメリカやイギリスでも、人口1000人当たり医師数は増えたという結果だった。
さらに、日本の人口1000人当たり看護職員数は平均(8.3人)以上で、先進諸国並みだった。しかし日医では、「准看護師の存在によって辛うじて保たれており、准看護師の供給次第では、たちまち平均以下に転落する可能性がある」と分析している。なお、看護職員数に占める准看護師の割合は約32%。
これらを受けて日医では、「日本の医療提供体制は現状ですら先進諸国に大きく水をあけられている。今後、急速な高齢化が進展する前に医療提供体制の再構築を検討すべき」と指摘。「日本の総医療費支出を身の丈にあった(経済力にみあった)ものにする観点からも、必要な医療資源を確保するための財源的手当てについても併せて検討するべきだ」としている。