厚生労働省のエイズ動向委員会(委員長:岩本愛吉東京大学医科学研究所教授)は7日、2006年1年間のエイズ患者・HIV感染者の速報値を公表した。患者・感染者を合計した年間報告数は、3年連続で1000件を突破し、1304件と過去最高となった。保健所等の無料検査や相談業務などの体制整備が、一般に知られるようになり、HIV抗体検査件数も過去10年で最多となるなど、厚労省では感染者の“掘り起こし”が進んでいるとみている。
速報値は、06年1月2日から12月31日までの動向を整理したもの。重複や未報告の症例もあるため、最終報告は4月の同委員会でまとめる予定。
05年1年間の新規HIV感染者は、現時点で過去最多を記録した前年の最終報告を、82件も上回る914件、新規エイズ患者も過去最高の04年より5件多い390件と、いずれも過去最高を記録した。また、両者を合わせると1304件で、3年連続で1000件を超える結果となった。
一方、献血件数は498万7857件で、そのうちHIV抗体・核酸増幅検査陽性件数は87件。10万件当たりの陽性件数は1・744件で、前年減少したが06年は再び増加した。
また、保健所等の抗体検査件数は2年連続10万件を超え、11万6550件となり、過去10年間で最多件数となった。
年間の新規感染者報告数をみると、男性同性間性的接触が半数を超えている。年齢別では20040代に感染が広がっているが、特に30代以上が増加傾向にある。厚労省では、夜間・休日等の利便性に配慮した検査・相談事業など、検査態勢の整備が行われ、勤労世代が検査を受けやすくなったなど、一定の成果が上がってきたことが一つの要因と見ている。
岩本委員長は、「HIV感染を早期に発見し、適切な治療を促進や感染拡大の抑制に努めることが大切。国民は、HIV・エイズについての理解を深め、積極的に予防に努め、HIV抗体検査を早期に受診してほしい」とコメントすると共に、自治体に対し、利用者の利便性に配慮した検査・相談事業の一層の充実と、エイズ対策推進協議会を開催し、予防を含めたエイズ対策計画を早急に策定するよう求めた。