肺癌や大腸癌などの治療に用いられる抗癌剤塩酸イリノテカン(商品名「カンプト」「トポテシン」)の副作用の発現を予測する体外診断用薬が、第一化学薬品によって日本で承認申請された。イリノテカンは効果が強い一方で、白血球減少など重篤な副作用が現れやすい薬剤として知られる。個々の患者の血液から遺伝子の違いを判定して予測、該当した患者は投与量を減らすといった対応が事前に取れるようになる。承認されれば、イリノテカンの副作用発現予測の診断薬は日本で初めて。
申請は1日付で行われた。承認・販売見込み時期などは明らかにしていない。発現予測は、イリノテカンの副作用に関与するUGT1A1遺伝子多型を判定するもの。
イリノテカンは、それ自体はプロドラッグで抗腫瘍活性は低いが、肝臓のカルボキシルエステラーゼなどによって加水分解されて、母化合物に比べ数百倍高い抗腫瘍活性を発揮するSN‐38に変換される。その後、SN‐38は主に肝臓でグルクロン酸抱合酵素(UGT)によってグルクロン酸抱合を受けて解毒され、胆汁を介して腸管に排泄されることが知られている。そのUGT遺伝子には遺伝子多型があり、酵素活性が落ちると副作用の発現が高まることが報告されている。
問題となるUGT1A1遺伝子には30種種類以上の遺伝子多型があるが、イリノテカンの副作用発現と関連するものとして、プロモーター領域の多型であるUGT1A1*28、エキソン1の多型UGT1A1*6とUGT1A1*27、エキソン4の多型UGT1A1*29、エキソン5の多型UGT1A1*7の存在が知られている。
今回申請となった診断キットは、強い下痢や白血球減少につながりやすいとされる「UGT1A1*28」「UGT1A1*6」「UGT1A1*27」を判定するもの。
判定には、遺伝子解析技術の一つで、操作が簡単で特異性も高いインベーダー法が用いられている。遺伝子増幅過程を必要とせず、特別な機器もいらないという。申請品は、同技術を持つ米国のTWT社と第一化学薬品が共同で開発を進めてきた。
米国では、TWT社が2005年8月に「UGT1A1*28」を判定するキットが承認を受けている。今回の申請品はそれに加えて、日本人を含むアジア人で、イリノテカンの代謝に関与する重要性が高い「UGT1A1*6」「UGT1A1*27」も対象としている。
7日に申請を発表した第一化学薬品は、「患者にあった治療の選択肢を提供する個別化医療に貢献できるものと期待されている」としている。