ロシュ・ダイアグノスティックス(RDKK)は、分子標的抗癌剤「ハーセプチン」の薬剤選択に用いるHER2遺伝子診断キットを今月に投入し、個別化医療(PHC)関連製品の本格的な販売をスタートさせる。3日に都内で記者会見した小川渉社長は、HER2遺伝子診断キットを2011年度の戦略製品と位置づけていく方針を示し、「遺伝子検査がビジネスに大きく寄与するだろう」と見通しを語った。
RDKKの10年度売上高は、前年度比3・6%増の445億円。国内臨床検査薬市場が1・5~2%の成長と見られる中、主力の体外診断薬・機器事業で免疫検査領域が伸長。新事業の病理検査事業、ライフサイエンス研究用試薬・機器事業も業績に貢献し、市場を上回る成長を達成した。
11年度は、28品目の新製品を投入し、売上高は3・0%増の459億円を目指す計画。体外診断薬・機器は、激しい価格競争の影響が予想されるものの、病理検査はHER2検査など個別化医療に関連した遺伝子検査の増加によって、市場平均を上回る成長を見込んでいる。小川氏は「新製品をドライバーに3%以上の成長を目指す」と語った。
特に今月後半に発売予定の「ベンタナ・インフォーム Dual ISH HER2キット」は、ハーセプチンの薬剤選択に用いる腫瘍マーカーとして、個別化医療の推進に向けた戦略製品と位置づけた。初年度売上高3000万円を目指す。小川氏は「癌の個別化医療に関連した遺伝子検査は間違いなく増加する」と、業績への貢献に期待を述べた。
ロシュグループでは、RDKKと中外製薬で個別化医療の連携を進めており、春にも予定されるハーセプチンの胃癌への適応拡大を見据え、「ベンタナ・インフォーム Dual ISH HER2キット」を投入すると共に、開発中の分子標的薬剤に関して、バイオマーカーとなる診断薬の共同開発を目指している。既に米国で第I相試験中の抗グリピカン3抗体「GC33」について、免疫組織染色による診断薬の同時開発が進められている。
現在、ロシュグループで160件のバイオマーカープロジェクトが進行中で、16件は分子標的薬剤に直結したバイオマーカーとされている。そのうち6件は、薬剤選択に用いるコンパニオン(併用)診断薬として開発中であり、数年以内をメドに、分子標的薬剤と同時発売を目指している。
海外では、ロシュが転移性悪性黒色腫に関わるBRAF遺伝子変異のある患者に対し、BRAF阻害剤の開発を最終段階まで進めており、今後BRAF阻害剤とコンパニオン診断薬が同時発売される見込みという。