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今年10月の合併を発表した田辺製薬の葉山夏樹社長と三菱ウェルファーマ(WP)の小峰健嗣社長は、都内のホテルオークラで行った記者会見で、早期に相乗効果を出し、まず国内基盤を固め、その上で課題となっている海外事業の展開につなげたいとの姿勢を示した。目指すは「国際創薬企業」。しかし、海外で開発する期待の新薬はPIIにとどまっている上、海外事業戦略は「決めた話にはなっていない。詳細には話せない」(三菱WPの小峰健嗣社長)と、どんな戦略品でどの程度拡大するのかといった具体的な戦略はみえていない。また、ジェネリック(GE)事業への参入、OTC事業の存続も打ち出し、体力のいる海外医療用薬事業強化を進める中でリソースの配分は課題になりそうだ。
両社長によると、合併は、田辺の「創薬力」、三菱WPの推進する「海外事業展開」を生かし、さらに強化するために行うもの。実現には合併による事業規模の拡大と経営基盤を強化することで、国内トップクラスの製薬企業となって、まずは国内市場という足元を固めることが不可欠との認識で一致している。それが合併を決断する背景となっているという。
2010年度には、現在4078億円の売上高を4700億円に、研究開発費は784億円を850億円に、営業利益は638億円を1050億円に、それぞれ引き上げを目指す。
営業利益の伸びのうち200億円を合併シナジーとし、販売拡大による利益シナジーは70億円、コストシナジーを130億円と試算。コスト面は、販管費抑制、国内外拠点の集約、新卒採用の抑制により創出するとしている。国内要員約7500人は、採用抑制などで6500人強まで削減することを見込むが、現段階では研究所や生産拠点の統廃合、現役従業員の削減は「次の課題」(葉山社長)と、まだ折り込んでいないという。
一方、売上高に比して多すぎるとの見方があるMR2600人体制は「どう活用し、さらなる(営業力)強化につなげられかがキー」(小峰社長)と削減する考えは示さず、販売シナジーに生かす姿勢。また、脳梗塞、心筋梗塞など循環器領域で両社製品が急性期から慢性期までカバーできる複合宣伝によって販拡につなげられるとしている。
自社販売を視野に入れた海外展開の本格化は、新製品が複数投入される予定の2010年度以降という。新社で描くのは、まずは米国での販売基盤の構築、欧中では既存薬の販拡を推進。10年以降に欧米で新規糖尿病薬のDDPIV阻害薬や過活動膀胱治療薬、高リン血症治療薬など、中国も新規糖尿病薬やC型肝炎治療薬などを投入。15年には継続的に新薬の投入で海外販売機能を強化する方針。
開発品は「倍増」(小峰社長)となるが、海外で期待する製品の開発はPIIという状況にあり、米国販売網の構築もこれから。どれを戦略品と位置づけ、海外事業をどの程度拡大するのかとっいった具体的な戦略はまだ明らかにできないとした。
新規事業としてのGEには参入を表明。葉山社長は「さらに良いスキームを検討している」とし、GE専門MRも検討課題に挙げた。小峰社長も「よいGE事業を根づかせたい」と語った。田辺のOTC事業も葉山社長は継続を表明、利益を上げる事業スキームを検討するとした。
■武田俊彦医政局経済課長、合併に期待感表明
三菱ウェルファーマと田辺製薬が、合併の方針を2日に正式発表したことを受け、厚生労働省の武田俊彦医政局経済課長は本紙の取材に対し、この合併を基本的に評価する姿勢を示すと共に、「海外事業展開を加速させ、国際創薬企業を目指してほしい」と要望した。また、ジェネリック市場への参入についても歓迎の意向を表明した。
武田課長は、既に両社の社長から合併について報告があったとし、「合併により国内医家向け医薬品の売上高は4位になると聞いた。私からは、それだけの規模になれば業界活動での貢献、社会的責務も大きくなると話した」としている。
その上で課長は、「両社は欧米の海外展開が遅れているらしいが、2社の合併はメガファーマを志向したものと思う。合併による経営基盤の拡大を活用して海外展開を加速し、国際創薬企業を目指してほしい」とし、基本的には歓迎する立場を明らかにした。
また新会社が、ジェネリック分野へ参入する意思を表明している点に関しては、「先発メーカーのブランド力を生かして、信頼性ある後発品事業を展開するよう期待している」と強調した。
さらに今後の再編に関しても、「一定規模がなければ海外展開は不可能。規模が大きくならないと、日本の製薬企業は世界企業に太刀打ちできない。日本企業にはもう少し頑張ってもらいたい」とし、国内企業の再編劇を引き続き注視していく姿勢を示した。
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