薬事・食品衛生審議会の医薬品等安全対策部会安全対策調査会は、ゲフィチニブ(販売名イレッサ)の市販後第III相臨床試験結果報告を販売企業のアストラゼネカ(AZ)から受け、当面の対応を協議した。AZの報告を検討した結果、化学療法歴のある手術不能または再発非小細胞肺癌の患者に対して、「ドセタキセルに優先してゲフィチニブの投与を積極的に選択する根拠はない」と結論づけると共に、検討結果を速やかに医薬関係者や患者に対して情報提供することを、企業に求めた。
報告された市販後第III相臨床試験は、ゲフィチニブの承認条件として実施されていたドセタキセルとの直接比較試験。検討からは、▽全生存期間におけるゲフィチニブ群のドセキタキセル群に対する非劣性を示せなかった▽全生存期間において、両群間に統計的な有意差が示されなかった▽全生存期間に与える後治療の影響を評価することは困難だった””などの結果が示された。
また、AZからデータ提供を受け、ドセタキセル群とゲフィチニブ群の治療効果の時間依存的変化をみるため、時点ごとの生存率を評価指標として、治療効果を時点ごとに推測する追加解析も行われた。その結果、投与初期ではドセタキセル群がゲフィチニブ群よりも優れていることが示唆された。また、投与24カ月時点前後での生存率は、ゲフィチニブ群がドセタキセル群よりも優れていたが、信頼区間が広いため、「ゲフェチニブ群が積極的に優れているとは言い難いデータ」と分析された。
こうした点を踏まえて調査会では、「1または2レジメンの化学療法歴を有する手術不能または再発非小細胞肺癌患者の治療に対しては、一般的にドセタキセルに優先してゲフィチニブを投与を積極的に選択する根拠はない」との結論を下した。
しかし一方では、後治療で▽ゲフィチニブ群については36%の症例でドセタキセルの投与▽ドセタキセル群については56%の症例でゲフィチニブが投与される””など、結果の解釈を難しくしている点もあり、今後も詳細な解析が必要があるとの見解も示した。
安全性については最新の添付文書に記載されている数字とほぼ同程度の副作用発現率だったとしている。
こうした報告を踏まえて調査会では、安全対策はこれまで通りの対策を継続することが適当としたほか、得られた結果について患者に十分説明することを、企業に指導するよう厚労省に求めた。また、有効性にかかわる詳細な解析を統計専門家などに依頼し、結果を調査会に報告する指導も求めた。
さらに調査会は企業に対し、ゲフィチニブの有効性と関係するEGFR遺伝子変異の解明等についても引き続き取り組むよう求めている。