厚生労働省が21日付で承認した新医薬品では、注目を集めていた新規アルツハイマー型認知症治療薬の「メマリー」「レミニール」、大型化が期待される直接トロンビン阻害剤「プラザキサ」、世界初の非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害剤「フェブリク」など、話題性の高い新薬が続々と登場した。特に「メマリー」と「レミニール」は、国内で久しぶりにアルツハイマー型認知症の新たな治療選択肢を広げ、「プラザキサ」は心房細動の脳卒中発症抑制では約50年ぶりの経口抗凝固剤、「フェブリク」も高尿酸血症治療剤として40年ぶりの新規作用機序を持つ薬剤となるなど、臨床現場を大きく変えるエポックメイキングな新薬の登場が目立った。
プラザキサカプセル:日本ベーリンガーインゲルハイム
「プラザキサカプセル75mg、同110mg」(一般名:ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩)は、ベーリンガーが大型化を期待する経口直接トロンビン阻害剤。今回、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中、全身性塞栓症の発症抑制の適応で承認された。
心房細動患者の脳卒中発症抑制を適応とした経口抗凝固薬の登場は、国内では約50年ぶり。申請から10カ月の迅速承認となった。
フェブリク錠:帝人ファーマ
「フェブリク錠10mg、同20mg、同40mg」(一般名:フェブキソスタット)は、帝人ファーマが自社創製し、世界戦略製品として、大型化を見込んでいる世界初の非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害剤。40年ぶりの新規作用機序を持つ高尿酸血症治療薬となる。1日1回の服用で血中尿酸値を強力に低下させる。
既にフェブキソスタットは、導出先企業が米国、カナダ、フランス、イギリス、ドイツなど9カ国で発売しており、ピーク時には全世界で売上高1000億円を目指す。
メマリー錠:第一三共
「メマリー錠5mg、同10mg、同20mg」(一般名:メマンチン塩酸塩)は、独メルツファーマシューティカルが創製したNMDA受容体拮抗剤。今回、中等度・高度のアルツハイマー型認知症治療剤として、認知症症状の進行抑制を効能・効果に承認された。
既に、中等度・高度のアルツハイマー型認知症の標準治療薬の一つとして、世界70カ国で使用されている。
レミニール錠・OD錠・内用液:ヤンセンファーマ
「レミニール錠4mg、同8mg、同12mg、同OD錠4mg、同OD錠8mg、同OD錠12mg、同内用液4mg/mL」(一般名:ガランタミン臭化水素酸塩)は、米J&Jファーマシューティカルリサーチと英シャイアーが共同開発したアルツハイマー型認知症治療剤。
既存薬と違い、ニコチン性アセチルコリン受容体のアロステリック部位に結合し、シグナル伝達を増強させると共に、神経伝達物質の放出を促す作用を発揮するのが特徴。これらにより、認知症症状の進行を遅らせる。
薬価収載後は、武田薬品と共同販売活動を行う。
ステラーラ皮下注:ヤンセンファーマ
「ステラーラ皮下注45mgシリンジ」(一般名:ウステキヌマブ遺伝子組み換え)は、日本初のヒト型抗ヒトIL‐12/23p40モノクローナル抗体。乾癬の発症に関与しているとされるIL‐12、IL‐23の共通構成蛋白p40に特異結合し、これらインターロイキンの働きを阻害する新規作用機序を持つ。
今回、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬を適応症に承認を取得した。用法・用量は、ウステキヌマブを1回45mg皮下投与し、初回とその4週後以降は12週間隔で投与する。
エディロールカプセル:中外製薬、大正製薬
「エディロールカプセル0・5μg、同0・75μg」(一般名:エルデカルシトール)は、中外製薬が創製し、大正製薬と共同開発した活性型ビタミンD3誘導体で、骨粗鬆症を効能・効果として承認を取得した。
既存の活性型ビタミンD3製剤の骨に対する作用を高めている。
ナーブロック筋注:エーザイ
「ナーブロック筋注2500単位」(一般名:B型ボツリヌス毒素)は、2000年に米国とアイルランドのエランから導入したB型ボツリヌス毒素製剤。今回、痙性斜頸を効能・効果に承認を取得した。
B型ボツリヌス毒素は、神経筋接合部の運動神経終末に特異的に作用することで、コリン作動性終末からのアセチルコリン放出を阻害し、筋弛緩作用を発揮する。先進国では、ボツリヌス治療が痙性斜頸の第一選択治療法となっている。
アリクストラ皮下注:グラクソ・スミスクライン
「アリクストラ皮下注5mg、同7・5mg」(一般名:フォンダパリヌクスナトリウム)は、完全化学合成の抗Xa阻害剤。今回、急性肺血栓塞栓症、急性深部静脈血栓症の治療を効能・効果に、追加承認を取得した。
既に同症の治療効能では、世界64カ国で承認されている。
ロミプレート皮下注:協和発酵キリン
「ロミプレート皮下注250μg調整用」(一般名:ロミプロスチム遺伝子組み換え)は、米アムジェンと協和発酵キリンが共同開発したトロンボポエチン受容体作動薬。血小板造血刺激因子製剤として、慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の効能・効果で承認を取得した。
世界28カ国で承認されており、国内では昨年2月2日に希少疾病用医薬品の指定を受けていた。
シュアポスト錠:大日本住友製薬
「シュアポスト錠0・25mg、同0・5mg」(一般名:レパグリニド)は、大日本住友製薬がデンマークのノボ・ノルディスクファーマから国内開発を引き継いだ速効型インスリン分泌促進剤。2型糖尿病患者の食後血糖改善を適応に承認された。ただ、食事療法や運動療法などの治療で、十分な効果が得られない場合に限られる。
ビダーザ注射用:日本新薬
「ビダーザ注射用100mg」(一般名:アザシチジン)は、米セルジーンから導入したアザシチジンの注射用凍結乾燥製剤で、骨髄異形成症候群(MDS)の効能・効果で承認を取得した。既に世界30カ国以上で販売され、米国ではMDS治療の第一選択薬として用いられている。
国内では08年11月に希少疾病用医薬品の指定を受けていた。MDSは、高い確率で白血病に移行する予後不良の難治性疾患。国内では難病に指定され、患者数は約9000人とされている。
オルベスコインヘラー吸入用:帝人ファーマ
「オルベスコ50μgインヘラー112吸入用、同100μgインヘラー56吸入用、同112吸入用、同200μgインヘラー56吸入用」(一般名:シクレソニド)は、帝人ファーマがスイスのニコメッドから導入した吸入ステロイド喘息治療剤。今回、定量噴霧式エアゾール剤として、小児用法・用量で追加承認を取得すると共に、小容量の新規格である100μgインヘラー56吸入用の承認も取得した。
ソニアス配合錠:武田薬品
「ソニアス配合錠LD、同HD」(一般名:ピオグリタゾン塩酸塩・グリメピリド)は、2型糖尿病治療薬ピオグリタゾンとSU剤であるグリメピリドの配合剤。1錠にピオグリタゾン15mgとグリメピリド1mgを含有する配合錠LD、ピオグリタゾン30mgとグリメピリド3mgを含有する配合錠HDの2種類の製剤が承認された。