大日本住友製薬と中外製薬は、治療用癌ペプチドワクチン「WT4869」の国内共同開発を開始する。来年1月から、骨髄異形成症候群(MDS)を対象とした国内第I/II相試験を実施する予定。
「WT4869」は、大阪大学大学院医学系研究科杉山治夫教授らの研究成果に基づいて、大日本住友と中外が創製した新規ペプチドワクチン。WT1蛋白は、白血病やほぼ全ての種類の固形癌で高発現し、癌抗原になっていることが、杉山氏らによって見出されている。
その白血病での発現量は、正常骨髄細胞の約1000倍、正常末梢血細胞の約10万倍とも報告されており、病気が進行するに従って発現量が増加し、発現量が高いほど寛解率が低くく、予後が悪い成績も得られている。
そのため、癌抗原として、WT1ペプチドを投与する癌の免疫療法が研究されてきた。その結果、WT1蛋白から、MHCクラスI分子への結合に必要なアンカーモチーフをもったペプチドで免役すると、WT1に特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)が誘導されることが明らかにされている。
「WT4869」はそうしたペプチドワクチンとして、治療効果を発揮する。
今後両社は、骨髄移植以外に治療法が確立していないMDSを対象に、「WT4869」の国内開発を進め、将来的には他の癌腫への適応拡大も検討する。