厚生労働省がまとめた、6月28日~9月26日までの、2010年度第3四半期のエイズ発生状況で、HIVの母子感染が、4年ぶりに報告があった前期に続き、新たに1件発生していたことが明らかになった。厚労省は「診断・治療開始が遅れたための感染例だと考えられる」と分析している。また、自治体が実施するHIV抗体検査や、保健所等での相談件数は前期を上回り、08年第4四半期をピークとした減少傾向に、一定の歯止めがかかったことも分かった。厚労省がエイズ動向委員会に報告した。
今期の新規報告は、HIV感染者が男性240人、女性17人の計257人、エイズ患者が男性103人、女性8人の計111人で、いずれも前期に比べると少ないが、前年同期を上回り、依然として増加傾向にある。累計では、HIV感染者が1万2320人、エイズ患者が5664人となった。
新規報告者の感染経路は、HIV感染、エイズ患者ともに同性間性的接触が最も多く、静注感染はなかった。
母子感染については、出産前に抗HIV薬を投与して、血中ウイルス量を下げたり、妊娠37週前後に帝王切開をするといった処置で、母子感染確率を抑えられる。そのためエイズ動向委員会は、「適切な感染防御対策を講じることで、感染率を1%以下にまで制御することが可能であることを、引き続き広く周知する必要がある」と指摘している。
一方、自治体によるHIV抗体検査件数は、前期より2223件多い3万4184件で、相談件数も3807件増えて4万3735件となった。厚労省は、特に8月の検査・相談件数が増加していることに着目し、前期にエイズ患者報告が四半期ベースで過去最大になったと報道されたことを、今期の増加要因に挙げている。