中外製薬は、抗体の作用を長時間持続できる新規抗体技術を確立した。抗体医薬に応用できれば、従来のモノクローナル抗体に比べ、投与量・投与頻度の少ない医薬品を開発できる可能性がある。ネイチャー・バイオテクノロジー電子版11月号で発表された。
従来のモノクローナル抗体は、血液中で抗原と結合すると、細胞内の器官「エンドソーム」に取り込まれ、抗原と抗体が結合したまま、エンドソームから細胞外にリサイクルされることで、抗原の作用を遮断して治療効果を発揮していた。そのため、抗体1分子は標的抗原と一度だけしか結合できず、抗原の作用も1回しか遮断することができなかった。
同社はそれを、抗体加工技術を使って、エンドソーム内で抗原を解離させることに成功した。エンドソームで解離した抗原は、細胞内消化器官のライソソームに移行して分解されるが、解離した抗体は、細胞外にリサイクルされるため、再び血液中で抗原と結合することができる。その結果、抗体は標的抗原と何度も結合し、その作用を繰り返し遮断することが可能になる。
この技術を応用した前臨床試験では、従来の抗IL‐6受容体抗体「アクテムラ」に比べ、IL‐6受容体の遮断時間を4倍以上持続させる結果が示されている。
その成績から、従来のモノクローナル抗体に比べ、投与量や投与頻度を少なくできると期待されており、今後、様々なモノクローナル抗体の創製にも適用できる可能性がある。