厚生労働省の「新型インフルエンザ専門家会議」は19日、フェーズ4以降のガイドライン(GL)案を審議した。GL案は、早期対応戦略案やワクチン接種、抗インフルエンザ薬など13本。感染拡大防止を柱に、ワクチンの開発状況に応じた接種対象者、抗インフルエンザ薬投与対象者の優先順位を明確に示すほか、抗インフルエンザ薬流通の規制なども行っていく。今後は、パブリックコメントを行い、広く国民の意見を聞くほか、保健所など現場からの意見聴取なども行い、3月にはGLをまとめたい考えだ。
GL案は、▽発生初期の早期対応戦略案▽積極的疫学調査▽検疫GL案▽職場や個人、一般家庭・社会▽医療体制▽医療施設の感染対策▽ワクチン接種▽抗インフルエンザ薬▽情報提供・共有(リスクコミュニケーション)――など13本に及ぶ。
新型インフルエンザ発生初期の早期対応戦略案では感染拡大防止策が中心で、住民へ抗インフルエンザ薬(タミフル)の予防投与を実施する。方策としては、▽家庭・施設内予防投薬(目的は感染拡大防止:対象者は症例の家庭・保育施設・学校・職場等内の全員)▽接触者予防投薬(個人の発症予防:症例の接触者)▽地域内予防投薬(ウイルス封じ込め:市町村内全員)――の3段階で取り組んでいく。
ワクチン接種GL案は基本方針として、[1]フェーズ4Aの段階で専門家会議の意見を聴いた上で医療従事者・社会機能維持者へのプレパンデミックワクチン(ヒト‐ヒト感染を起こす前に、鳥‐ヒト感染の患者または鳥から分離されたウイルスを基に製造されるワクチン)接種を開始[2]新しいウイルス株の特定後、パンデミックワクチン(ヒト‐ヒト感染を生じたウイルスまたはこれと同じ抗原性を持つウイルスを基に製造されるワクチン)の生産を開始[3]パンデミックワクチンが製造され次第、医療従事者、社会機能維持者から接種を行う――といった考えが提示された。
さらに接種対象者については、プレパンデミックワクチンは原則として患者に接触する医療従事者と、電気・水道・交通など国民生活の破綻を防止するために必要最低限の業務に従事する社会機能維持者に接種することになる。
パンデミックワクチンは国民全員が対象だが、製造量に一定の限度がある場合も想定される。その際の優先順位としては、まず医療従事者と社会機能維持者に接種した後、原則として「死亡者を最小限にすることを重視する」視点で、「成人に重症者が多いタイプのウイルス」の場合は、[1]医学的ハイリスク者[2]成人[3]小児[4]高齢者――の順、「高齢者に重症者が多いタイプのウイルス」の場合は、[1]医学的ハイリスク者[2]高齢者[3]小児[4]成人――の順とした。
抗インフルエンザ薬GL案では、薬剤の流通調整についての考え方を盛り込んだ。具体的に、国内発生前では、▽タミフルの返品を行わないよう医療機関・卸売業者に指導▽医療機関や住民に対して不要にタミフルを入手しないよう情報提供する――などを実施していく。
また国内発生後の対応としては、▽都道府県は医療機関ごとの届出患者数とタミフルの使用状況に関する情報収集を強化し、買い占めを把握した場合は厳重に指導▽特定の医療機関がタミフルを買い占めていることが発覚し、悪質な場合は医療機関名を公表▽備蓄用タミフルは卸売業者を通じて都道府県が指定する医療機関に配送する――などの対応をとる。