厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課は、薬局と病院・診療所向けの両「麻薬管理マニュアル」を改訂、在宅で患者の看護に当たる看護師やホームヘルパーに、薬局から麻薬を手渡せるようにするなど、麻薬取り扱いの一部弾力化を図った。今回の改訂は、麻薬の調剤や管理に関する規制を緩和し、癌患者の疼痛管理を容易にするもの。近年の癌患者増加を受け、特に末期癌患者の在宅医療推進を狙いとしている。
麻薬は末期癌患者のQOL向上等を目的とした疼痛緩和に重要なものだが、日本のモルヒネ消費量は増加傾向にあるものの、他の先進諸国に比べると依然として少ないのが現状。一方、癌による死亡は年間30万人を超え、これからの高齢社会を考えると、将来的にも増加が見込まれると共に、癌患者の在宅療養推進が掲げられるなど、在宅でのケア体制の整備が急務となっている。
これに対応し厚労省は昨年3月、各都道府県に「在宅医療の推進のための麻薬の取扱いの弾力化について」の通知を発出。薬局で患者自身が麻薬を受領することが困難な場合は、看護師やホームヘルパー等で、患者・その家族の意を受けた者が「患者等」とみなされ、受領できることとなった。併せて、受領までの待ち時間の短縮のため、ファクスで送信された処方せんに基づき調剤が開始できることも可能とした。
さらに、在宅医療の推進に伴い、麻薬の院外処方による交付のみを行う施設が増加すると考えられることから、これら施設については、麻薬保管設備の設置義務をなくし、麻薬診療施設の負担軽減を図っている。
今回の麻薬管理マニュアル改訂は、基本的にこの通知に基づいて行われたもの。在宅医療への対応を中心とした薬局版では新たに、麻薬の譲り渡しにつき、通知で示された看護師やホームヘルパーに加えて「ボランティア等」も麻薬を受領できることになった。この際の本人確認は特に様式を規定せず、書面、電話等によるものとして、現場でのより柔軟な運用を目指している。
また、麻薬注射剤を患者に交付する場合は従来、自由に薬液を取り出せない状態で渡すものとしていたが、患者等の意を受け、さらに麻薬施用者から医療上の指示を受けた看護師が患者宅で患者に施用を補助する場合に限り、アンプル剤のまま手渡すことが可能となった。
「病院・診療所における麻薬管理マニュアル」では、薬局版に準ずる改訂に加え、疼痛緩和のために患者が必要最小限の麻薬を保持でき、不注意による紛失の際も事故届を出す必要がないことなどを新たに定めた。