23日付の承認新薬では、関節リウマチ(RA)を適応とするT細胞選択的共刺激調節剤「オレンシア錠」や国内初の骨形成促進作用を持つ骨粗鬆症治療薬「フォルテオ皮下注」など、新規作用機序を持った薬剤が登場。また、国内初の1日1回投与のエンドセリン受容体拮抗薬「ヴォリブリス錠」が、肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬として承認された。
オレンシア点滴静注用:ブリストル・マイヤーズ
「オレンシア点滴静注用250mg」(一般名:アバタセプト)は、米ブリストル・マイヤーズ・スクイブが開発した生物学的製剤。既存治療で効果不十分なRAの効能・効果で承認を取得した。
アバタセプトは、CTLA4‐Ig製剤。CTLA4はT細胞補助シグナル分子で、活性化したT細胞で発現し、抗原刺激を受けるとその活性を抑制して、T細胞による免疫応答を収束に向かわせる分子。リガンドとなるのはT細胞を活性化させるCD28と同一のB7分子群で、CD28に比べてリガンド結合能が高いため、リガンド結合を競合的に阻害して、T細胞の活性を抑制するというのが機序。それによって、RA発症に関わるT細胞の活性化やサイトカインの産生を抑えることで、効果を発揮する。
既にRA治療薬として世界50カ国以上で販売されている。
フォルテオ皮下注:日本イーライリリー
「フォルテオ皮下注カート600μg、同皮下注キット600μg」(一般名:テリパラチド)は、国内初の骨形成促進作用を持つ遺伝子組み換え型の副甲状腺ホルモン製剤。今回、骨折の危険性の高い骨粗鬆症の適応で承認された。1日1回の皮下投与で、骨形成に直接関与する骨芽細胞の分化促進とアポトーシスを抑制し、骨芽細胞の破骨細胞を上回る活性化を実現。これによって、骨微細構造を再構築し骨強度を高め、骨折リスクを軽減する。
アブラキサン点滴静注用:大鵬薬品
「アブラキサン点滴静注用100mg」(一般名:アルブミン懸濁型パクリタキセル注射液)は、米バイオ企業「アブラキシス・バイオサイエンス」が開発した新規パクリタキセル製剤。今回、乳癌の適応で承認された。ヒト血清アルブミンとパクリタキセルを結合させたナノ粒子製剤で、過敏症を防ぐためのステロイド剤などの前投薬を必要としないのが特徴。また、薬剤の点滴時間が30分と短縮され、患者負担の軽減を図った。
ヴォリブリス錠:GSK
「ヴォリブリス錠2・5mg」(一般名:アンブリセンタン)は、PAHを適応に開発された1日1回投与の経口エンドセリン受容体拮抗薬。プロピオン酸系のエンドセリンA受容体に特異的な拮抗作用を示し、血管収縮性物質「エンドセリン‐1」による血管収縮・細胞増殖作用を抑制することによって、PAHの症状を改善する。
2007年5月に稀少疾病用医薬品の指定を受けている。
イーケプラ錠:UCBジャパン
「イーケプラ錠250mg、同500mg」(一般名:レベチラセタム)は、UCBが創製し、UCBジャパンと大塚製薬が国内共同開発した新規抗てんかん薬。今回、「他の抗てんかん薬で効果不十分なてんかん患者の部分発作」の適応を取得し、抗てんかん薬との併用療法で使用が認められた。シナプス小胞蛋白質2Aへの結合や、カルシウムチャネル阻害などの作用機序を持つ。
既に海外では、世界90カ国以上で発売されており、国内では大塚製薬とUCBジャパンが共同販促を行う。
トーリセル点滴静注液:ファイザー
「トーリセル点滴静注液25mg」(一般名:テムシロシムス)は、旧ワイスが開発した癌の増殖・成長や血管新生の制御に関わる「mTOR」活性を阻害する新規抗癌剤。根治切除不能・転移性腎癌患者に対し、週に1回点滴静脈内に投与することで、mTORの活性を阻害。細胞周期の進行や血管新生を抑制し、癌細胞の増殖抑制効果を発揮する。
現在、世界52カ国以上で承認され、米国のNCCNのガイドラインでも腎癌に対する薬物治療の一つとして、トーリセルの投与が推奨されている。
ビビアント錠:ファイザー
「ビビアント錠20mg」(一般名:バゼドキシフェン酢酸塩)は、日本ワイスレダリー(現:ファイザー)が臨床試験を開始し、旧ワイスが07年12月に承認申請した、選択的エストロゲン受容体モジュレーターの閉経後骨粗鬆症治療薬。骨のエストロゲン受容体と結合することで、骨吸収を抑制し、骨密度の増加を促す。
トラマールカプセル:日本新薬
「トラマールカプセル25mg」「同50mg」(一般名:トラマドール塩酸塩)は、軽度から中等度の癌疼痛に使う中枢性鎮痛薬。WHOの3段階除痛ラダーの第2段階に位置づけられる。第1段階の非オピオイド鎮痛薬では治療困難な癌疼痛に用いる。
オピオイド受容体作動作用、下行性疼痛抑制系の活性化作用によって鎮痛効果を示す。モルヒネに比べ便秘など副作用が少ない。麻薬、向精神薬に指定されていない。1日4回服用する。
世界では100カ国以上で販売されている。ドイツのグリュネンタール社から日本新薬が導入した。同成分の注射薬は2003年に国内発売済。
ヤーズ配合錠:バイエル薬品
「ヤーズ配合錠」は、月経に伴う痛みなどの症状を緩和する月経困難症治療剤。新規プロゲスチン(合成黄体ホルモン)のドロスピレノンを3mg、エストロゲン(卵胞ホルモン)のエチニルエストラジオールを国内最低用量の0・02mg含む。排卵抑制作用と子宮内膜増殖抑制作用が、痛みの元となるプロスタグランジンなどの過剰産生を抑え、症状を緩和する。
実薬を1日1錠、24日間服用した後、プラセボ錠を4日間服用する28日間サイクルを繰り返す。
日本では、生殖可能年齢に該当する約2700万人の女性のうち、3分の1が何らかの医学的支援を必要とする月経痛を抱えていると推定されるという。
パシル点滴静注液/パズクロス点滴静注液:富山化学、田辺三菱製薬
「パシル点滴静注液300mg、同500mg、同1000mg」「パズクロス点滴静注液300mg、同500mg、同1000mg」(パズフロキサシンメシル酸塩)は、富山化学と田辺三菱が共同開発を進めてきた注射用ニューキノロン系抗菌製剤。今回、適応菌種として「肺炎球菌」、適応症として「敗血症」が追加されると共に、用法・用量の一部変更として、「肺炎球菌による肺炎、重症・難治性呼吸器感染症の適応症に対し、1日2000mgを2回に分けて点滴静注する」ことが認められた。また、新たに「1000mg」が規格追加された。
パルミコートタービュヘイラー:アストラゼネカ
「パルミコート100μgタービュヘイラー112吸入、同200μgタービュヘイラー56吸入、同112吸入」(一般名:ブデソニド)は、02年1月に国内で発売された気管支喘息治療薬で、今回新たに小児の用法・用量を追加した。1回100~200μgを1日2回吸入投与し、1日最高量として800μgまで増量が認められた。
アレロック錠:協和発酵キリン
「アレロック錠2・5、同錠5」(一般名:オロパタジン塩酸塩)は、同社が01年3月に国内発売したアレルギー性疾患治療剤。これまで成人のアレルギー性疾患で使用されてきたが、今回7歳以上の小児適応症として、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎・皮膚そう痒症などの皮膚疾患に伴うそう痒を追加した。5mgを朝、就寝前に1日2回経口投与する。
タケプロンカプセル・OD錠:武田薬品
「タケプロンカプセル15、同OD錠15」(一般名:ランソプラゾール)は、胃潰瘍・十二脂腸潰瘍を効能・効果とするプロトンポンプ(PPI)阻害剤。今回、消化性潰瘍治療剤として国内初となる「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍または十二脂腸潰瘍の再発抑制」の適応を追加した。
ミカムロ配合錠:日本ベーリンガーインゲルハイム
「ミカムロ配合錠AP」は、ARB「ミカルディス錠」(一般名:テルミサルタン)とカルシウム拮抗剤「アムロジピン」を配合した降圧剤。1剤中にテルミサルタン40mgとアムロジピンベシル酸塩6・93mgを含有した。