抗癌剤のパクリタキセルを内包化した、微粒子のミセル化製剤「NK105」の国内第II相臨床試験結果が、国立がん研究センター中央病院消化器内科の加藤健氏から発表された。胃癌の二次治療法としての効果や、安全性を検証したもの。パクリタキセル使用時に問題となる、蓄積性の末梢神経障害の発現はほとんど見られず、微粒子化により期待された高い安全性が実証された。奏効率は25%で、汎用される他の薬物療法に比べ「同等かやや上」という結果となった。17日の日本DDS学会で示された。
臨床試験は、化学療法歴がある切除不能な再発胃癌患者57人を登録して実施。体表面積1m2当たり150mgの「NK105」を3週間ごとに、30分間点滴静注によって投与した。評価可能だった56人について解析が行われた。
グレード3以上の有害事象の出現割合は、好中球減少(64・9%)、白血球減少(17・5%)、感覚性神経障害(1・8%)、疲労(3・5%)となった。治療成功期間は2・8カ月。「NK105」の投与中止に至った理由は、腫瘍増悪が51例(91・2%)と多くを占め、有害事象による中止は2例(3・6%)だけだった。
現在、パクリタキセルのDDS製剤として、パクリタキセルをアルブミンに結合させた「アブラキサン」、ポリグルタミン酸ポリマーに結合させた「Xyotax」が世界的に注目されている。加藤氏は、これら2剤ではグレード3以上の末梢神経障害が、10%以上の確率で出現するのに対し、「NK105の神経毒性は非常に小さい」と話した。
一方、有効性については、奏効率は25%、全生存期間は14・4カ月、無増悪生存期間は3・0カ月という結果になった。
現在、胃癌の二次療法としてパクリタキセル単剤、イリノテカンの単剤や併用などの薬物療法が実施されており、奏効率は概ね20%前後、全生存期間は7カ月前後となっている。
加藤氏は、「NK105」の奏効率や無増悪生存期間はこれらに比べ「同等かやや上くらい」と評価。ほぼ2倍となった全生存期間は「かなりいい数字」とし、患者の選択に加え、二次治療として実施しやすく、患者の負担が少ないため、「三次以降の治療が積極的に行われた結果ではないか」と解説した。
加藤氏は「胃癌の二次治療としてNK105は、高い有効性と安全性を示した。今後はさらに領域を広げ、臨床開発を加速させる予定」と報告。「違うスケジュールで投与した時に、3週間の投与方法と比べてどうかも、今後検討することになると思う」とし、投与間隔などを新たに設定した臨床試験を実施したい考えを示した。
「NK105」は、バイオベンチャーのナノキャリアが持つミセル化技術により開発された製剤。日本化薬が国内で臨床試験を進めている。