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【年頭のあいさつ】医薬分野は“一丁目1番地””日本製薬工業協会会長

2007年01月01日 (月)

日本製薬工業協会会長 青木 初夫

青木 初夫氏

 最近、製薬産業にフォローの風が吹き始めていると感じています。例えば、昨年7月に示された経済成長戦略大綱の中で、医薬品・医療機器産業の国際競争力強化が盛り込まれ、臨床研究基盤の整備・治験環境の充実等に加えて、官民対話の積極的開催にも言及されています。同じく9月の安倍内閣発足以降は、経済成長により重きを置いた政策が打ち出されつつあり、イノベーション25では重点3分野の中でも医薬を「一丁目1番地」として位置づけています。

 これまで、医療を達成するためのコストとしてのみ捉えられることが多かった医薬分野が、社会・経済成長の源となるイノベーションを創造する中核として認知されてきたことに、率直な喜びと同時に責任の重さを感じています。研究開発型製薬産業は、医療上のアンメットニーズに対応した革新的医薬品を開発、提供することを通じて、イノベーションの成果を社会に還元する使命を担っています。イノベーション政策が国の最重点課題に位置づけられたことは、イノベーティブな製品を継続的に創出できるか否かが医薬品が生き残っていく上での重要な要素であるとされたと認識しています。製薬産業のグローバル化、ボーダーレス化はこの10年で急速に進展してきましたが、日本を主要市場とする医薬品企業にとって優勝劣敗が今後さらに鮮明になると捉えています。

 イノベーション政策については、研究から製造に至る科学技術課題については言うまでもないことですが、これまであまり議論されてこなかった組織・社会システムの改革についても検討する必要があると考えています。科学技術に関しても、総合科学技術会議が年末に報告した「科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について」は、制度改革について法整備も含めて具体的な方向と工程表を示しています。この中で、イノベーションの成果を社会に還元するための具体的な課題の一つとして、治験を含む臨床研究の総合的推進が取り上げられていることは医薬に対する期待の表れと捉えています。組織・社会システムの改革に関しては、例えば、薬価基準制度と知的財産権の課題があると思います。イノベーションを継続するためには、知的財産権が保護されている期間内に次の投資に見合う収益を上げる必要がありますが、現状の制度下ではそれが難しい状況にあります。薬価基準制度には国民皆保険上の意義もありますから一面だけから論じられないかもしれませんが、こういった問題についても多方面から意見と知恵を寄せ合って、よりよい方向を議論していく必要があります。われわれが提唱している官民対話の場がその中心になればよいと期待しています。

 患者の意識・関心の向上やITによる医療情報伝達の多様化とスピード化などがあり、患者中心の医療を求める動きは、大きな流れとなっています。医薬品情報の提供など製薬産業の役割が問われており、これらに応えるため、2005年に発足した「日本慢性疾患セルフマネジメント協会」の活動に協力し、慢性疾患セルフマネジメントプログラムの普及と定着に協力していくほか、患者会や医療消費者との対話をはじめとするさらなる広報活動を通じて、「見える産業」としての製薬産業に対する国民の理解を深めていくことが必要と考えています。

 世界に目を転じると、医薬品アクセス問題、知的財産権、感染症対策、WHOならびに途上国政府との官民パートナーシップなど重要課題が山積しています。グローバルな視点からわが国医療の競争力と魅力度を高めること、および医薬品産業の健全な発展により国民経済への一層の貢献を実現することを目標に、政策論議の場としてのセミナーなどを開催し、政策関係者の理解を促進してまいります。

 このような多くの課題がある中で、研究開発型製薬企業の団体として製薬協の役割はますます重要になっています。

 最後になりましたが、本年も皆様のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。



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