新医薬品販売制度の環境を整備
厚生労働省医薬食品局の2007年度予算案が決まった。予算案総額は今年度より2億0800万円(2・3%)少ない89億1600万円となった。医薬品販売制度見直しを中心とする薬事法改正の円滑な施行に向けた環境整備として、3200万円が認められた。また、治験促進のための海外調査や、東アジア諸国の治験データの受け入れについても検討に着手する。
国内外の治験実施状況を調査
安全使用マニュアル作成へ
予算案は、[1]より良い医薬品等を、安全性に配慮しつつ迅速に提供するための対策の推進(38億7500万円)[2]新たな医薬品販売制度の円滑な実施(3200万円)[3]麻薬・覚せい剤等乱用防止対策の実施(3億4300万円)[4]医療用麻薬の適正使用の推進(1600万円)[5]薬局機能の強化・薬剤師の資質向上(3億5300万円)[6]安全、安心な血液製剤の供給確保(15億4200万円)[7]化学物質の安全対策の推進(7億1100万円)――の7本柱を設定した。予定していた事業については全て認められたという。
[医薬品等の提供のための対策推進]では、▽安全対策の推進(5億6200万円)▽新しい医薬品・医療機器の迅速な提供(10億0700万円)――が主なもの。
安全対策の推進では、新規に医薬品安全使用実践推進事業(3000万円)を立ち上げられる。副作用情報の収集・評価・伝達は従来から実施されているが、ドクターレターや安全性情報等が病院などで、どのように活用されているか把握されていない。そこで、予測・予防型安全対策を実践するため、全国6カ所程度のモデル病院を選定して、医療現場における安全性情報等の活用状況を検討し、医薬品安全使用実践マニュアルの作成・普及に2年計画で取り組んでいく。
新しい医薬品等の迅速な提供では、治験実施環境確保を制度面から検討していくため、国内外の状況を把握することを目的に、治験実施状況調査事業として4300万円が計上された。この事業では、規制強化につながらないよう、治験実施施設に対するGCP調査の簡略化や、認定制度導入などの可能性を含めて検討していく。
また、迅速な承認申請の環境を整備するため、東アジア諸国で実施された治験データの受け入れについて検討する東アジア医薬品規制調査対策費(500万円)も計上した。東アジア諸国の規制や治験実施状況等を調査すると共に、規制当局等と情報交換を行い、ICHガイドラインの普及などを目指す。
また、後発医薬品の情報提供の充実を図るため、後発医薬品品質情報提供等推進費(9900万円)では、後発医薬品が国民、医療関係者に安心して使用できるよう品質に関する研究論文等を収集、整理し、必要に応じて、試験検査を行い、先発医薬品との同等性に関する情報提供を行っていく。
[医薬品販売制度の円滑な実施]では、改正薬事法の付帯決議を受け、一般用医薬品のリスク評価対策(1500万円)を実施する。一般用医薬品やスイッチOTC候補成分について海外の安全性情報等を調査し、リスク分類の適切な見直しや、一般用医薬品へのスイッチが可能な成分・効能範囲の明確化を検討していく。
また、新たな一般用医薬品販売の専門家である登録販売者について、試験ガイドライン等策定費(300万円)も認められており、都道府県に提示する試験出題基準の策定等を行う。
分業計画でモデル事業
[薬局機能の強化]としては、新規に医薬分業計画等策定事業(600万円)に取り組んでいく。医薬分業を一層推進するため、2カ所程度のモデルを選定し、地域の実情に応じた医薬分業計画モデルを策定する。さらに、改正医療法に対応していくため、医療連携体制における薬局の役割や、地域医療への薬局の関与などについて、2カ所程度の医療計画モデルを策定し、都道府県に提示していく。
一方、薬局でも医療安全の確保を図るため、医療機関と同様、ヒヤリ・ハット事例の情報収集、分析事業を開始していくための具体的方策を検討する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業導入検討費」は、日本薬剤師会への補助事業として200万円が認められた。
[医療用麻薬]は、癌対策の一環として、その適正使用の推進と、緩和ケア充実の環境整備を行う2年計画の事業。来年度は、諸外国の使用・管理の実態を調査し、2年目に適正使用マニュアルの作成に取り組んでいく。