相次いで登場する高血圧治療薬の配合剤をめぐる開発戦略の妥当性が、25日に都内で開かれた日本アプライド・セラピューティクス学会で議論された。国内で販売されている配合剤は、アンジオテンシンII受容体拮抗剤(ARB)がベースとなっているため、高価な医療につながるとの懸念が示されたが、フロアからは「どういった薬剤を使って高血圧を治療していくのか、医療機関も採用方針を打ち出すべき」と、医療機関側の姿勢を問う意見も出た。
高血圧治療をめぐっては、平均で2~3剤の治療薬を併用することが一般的となっているが、服薬継続率の低さなどを背景に、配合剤の開発が進められてきた。万有製薬がARBのロサルタンとサイアザイド系利尿薬のヒドロクロロチアジドを配合した「プレミネント」を先行販売したのに続き、最近ではARB+利尿剤の組み合わせで、武田薬品が「エカード」、ノバルティスファーマが「コディオ」、日本ベーリンガーインゲルハイムが「ミコンビ」を相次いで発売した。
さらに、ARBとカルシウム拮抗剤のアムロジピンの配合剤として、武田が「ユニシア」、ノバルティスが「エックスフォージ」を投入。第一三共もARBとカルシウム拮抗剤のアゼルニジピンを配合した「レザルタス」を発売するなど、乱立模様となっている。
こうした状況に、聖マリアンナ医科大学病院薬剤部の増原慶壮氏は、「海外では、ACE阻害剤、利尿剤が第一選択薬と位置づけられ、配合剤も利尿剤を優先するよう推奨されているが、日本では高価なARBが主体になっている」と問題点を指摘。個人的な見解とした上で、「ACE阻害剤を主体とした使い方が必要なのでは」との考えを示した。
ただ、万有など製薬各社は、国内でARBが普及している点を挙げ、「日本人に多いACE阻害剤の副作用である空咳が少なく、降圧効果も高い」と、ARBをベースとしている妥当性を主張。「併用療法に比べてアドヒアランスもいい」と配合剤の意義を訴えた。その上で、配合剤の位置づけは、あくまでも第二選択薬だとして、降圧効果不十分の患者に対し、適切に使用されるべきとの見解を示した。
一方、フロアからは「新規成分でない新薬が増えてくる中で、医療現場もどういった薬剤を使って治療していくのかをよく考えて、採用方針を打ち出すべき。そうでなければ、保険薬局は取扱品目が増えるばかりだ」との意見も出た。高血圧治療の新たな選択肢として、相次いで登場する配合剤に対し、医療機関側にも製薬企業のプロモーションに拠らない治療方針の確立が求められた格好だ。