日本学術会議「脱タバコ社会実現分科会」は9日、受動喫煙防止推進に関する提言を公表した。提言では、わが国のタバコ規制は諸外国に比べ、大きく遅れをとっているとした上で、職場・公共の場での受動喫煙防止の立法措置を求めている。
学術会議では、一昨年3月に「脱タバコ社会の実現」として、▽タバコの直接的・間接的健康障害の教育・啓発▽喫煙率削減の数値目標設定▽未成年者の喫煙防止法の遵守▽職場・公共の場での喫煙禁止--など、7項目にわたり政府に要望した。
一方、わが国は、今年2月に「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」発効5周年を迎えたが、条約締結国の多くが、タバコ規制の取り組みを強化している中で、大きく遅れをとっているがのが現状。
今回の提言では、2007年の条約締結国会議で採択された、職場・公共の場・公共交通機関での受動喫煙の罰則付き法規制を求めたガイドラインの実施が、わが国でまだ実現していないと指摘。また、▽受動喫煙防止対策の縦割り行政の弊害▽全ての労働者が平等に受動喫煙から守られるべき▽やむを得ず喫煙室の設置を認めるが場合の「分煙効果判定基準」--などの問題点を紹介。
その上で、今年10月1日からタバコ税引き上げが実現したが、引き上げの継続と、受動喫煙防止のための立法措置を行うこと、さらに、喫煙者に対する禁煙治療・禁煙支援へのアクセスを容易にすることを求めた。
これらの対策を行うことで、「先進国の中で、特に高い成人男性の喫煙率を減少させ、脱タバコ社会の実現が可能になる」とし、次の三つの提言を行っている。
▽わが国は、第2回「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」締約国会議で、全会一致で採択された「たばこの煙にさらされることからの保護に関するガイドライン」に沿って、職場・公共の場所における受動喫煙防止のための強制力のある立法措置を講じるべきである。
▽その際、換気、空気清浄機、喫煙区域の指定などの手段は、必ずしも有効でないとする科学的根拠に留意して、屋内においては分煙ではなく禁煙を目指すべきである。また、全ての国民を等しくタバコの被害から守るという立場から、職場・公共の場所は例外を認めずに受動喫煙防止の対象とすべきである。
▽バー・レストランなど特定の施設に関しては、事業者に対する配慮として、一定の猶予期間を設けることはあり得るが、適切な手段を講ずることにより、その猶予期間はできる限り短縮すべきである。