ケンコーコム(東京港区、後藤玄利代表)とウェルネット(横浜市、尾藤昌道代表)の2社が、インターネット等による医薬品の通信販売についての権利確認と、それを禁止する薬事法施行規則等の一部を改正する省令(昨年6月1日施行)の無効の確認・取り消しを求めて、国(厚生労働省)を相手に提起した行政訴訟の判決が3月30日、東京地裁で行われた。岩井伸晃裁判長は両社の請求を棄却した。敗訴した後藤氏ら原告団は同日、「国側の主張をなぞっただけの極めて不当な判決。これが第一審であり、理不尽な状況に終止符を打つべく、最後まで戦う」など、控訴する考えを表明した。
厚労省が2009年2月に交付した薬事法施行規則の改正省令によって、法が施行された昨年6月1日以降、一般薬のうち第1類薬、第2類薬の販売は、薬局または店舗での対面販売が原則とされ、郵便等販売は禁止された。訴訟はこれを不服として起こされたもので、2社は、これまで認められていた営業権を剥奪され、営業上、不可償の深刻な不利益を被るとして、昨年5月、その救済を求めて東京地裁に提訴した。
昨年7月に第1回の口頭弁論が行われ、12月まで計4度の口頭弁論で結審し、この日の判決となった。原告側は、「これまで問題なく行われてきた医薬品の郵便等販売について、それに起因した問題や事件が存在しないにもかかわらず、明確な理由もないまま、一般用薬のインターネット販売そのものを禁止する規制は、法律的な見地から見ても行き過ぎた過度の規制で、営業の自由を保障した憲法に違反する。それを省令で定めること自体も違憲であり、改正省令は二重の意味で違憲」などと主張し続け、省令の取り消しなどを求めてきた。
判決で岩井裁判長は、これらの求めをいずれも棄却した。しかし一方で、将来的に情報通信技術等をめぐる状況など、有意な事情の変更が生じた場合には、一般薬のリスク区分や、区分に応じた規制のあり方を含めて、「その時点の新たな状況に応じた規制内容の見直しが図られることが、新薬事法の趣旨にも合致するものと解される」との付言を加えるなど、今回の判断が、恒久的に固定化されるべき規制措置として位置づける趣旨ではないとした。
会見で後藤氏ら原告サイドは、「判決では、対面販売とネット販売で情報提供の難易、実現可能性に有意な差があると断じている点が納得できない。ネット販売では、購入相手の申告が虚偽か見抜けないとしているが、(ドラッグストアなど)全ての販売現場で、実現できているのか。既存業界を守り、新たな台頭を妨げることに、司法までもが加担したとも思える、まさに結論ありきの不合理な判決」などと、徹底抗戦の姿勢を明らかにした。
一方、この判決を受け厚労省は、「概ね国の主張が認められた」とすると共に、「国民が医薬品を適切に選択、適正に使用するためには、リスクの高い医薬品は専門家が対面で情報提供することが必要。今後とも一般薬の販売制度の周知、徹底に務めたい」とコメントしている。