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【林原生物化学研究所】新たな制御性T細胞を発見‐抗癌・免疫抑制作用を併せ持つ

2006年12月18日 (月)

 林原生物化学研究所(社長林原健氏)は、抗癌作用と免疫抑制作用を併せ持つ新規の制御性T細胞を世界で初めて発見した。「HOZOT」(ホゾティ)と名付け、その用途などについて特許出願中だ。

 「HOZOT」は、ヒト臍帯血の細胞を培養する実験で、増殖因子を添加しなくても増殖するヒト血液細胞として見出されたもの。その生理活性について調べた結果、癌細胞などへの細胞障害活性を持ちながら、従来の制御性T細胞と同様の免疫抑制活性も併せ持っていることが分かった。

 細胞障害活性については、臍帯血細胞の増殖を助けるために支持細胞として用いたところ、マウスの間質細胞を殺しながら増殖する現象が見られている。そこで、各種の癌細胞への作用についてin vitroで調べられた結果、HOZOTと癌細胞の4対1の共存で、ヒトメラノーマ細胞で約33%、ヒト大腸癌細胞で約91%を死滅させるという非常に強い細胞障害活性が認められている。

 一方、「HOZOT」は、細胞表面抗原の解析から、「CD4+CD25+T細胞」として知られている制御性T細胞の一種と考えられている。そこで、免疫を過剰に活性化する働きを持つヘルパーT細胞に対して抑制作用を発揮するかについて、in vitroで調べた結果、ヘルパーT細胞の増殖を対照の約10分の1に抑制することが分かった。

 さらに、既知の制御性T細胞との違いを調べたところ、炎症を抑える生理活性物質として知られるIL‐10を産生する能力が非常に高いことも確認されている。

 抗癌治療への制御性T細胞の応用としては、モノクローナル抗体を投与して制御性T細胞の機能を弱め、自己免疫反応を高める方法などが検討されているところだが、「HOZOT」は、細胞障害活性も持ちながら、かつ免疫反応を抑える働きを持っていることから、各種の臨床応用が期待されている。林原生物化学研究所では、癌をはじめ、自己免疫疾患やアレルギー疾患、臓器移植後の拒絶反応の抑制など、各種疾患の治療応用に向けて、今後さらに研究を進めて行く予定だ。

 既に、新規の制御性T細胞とその用途などに関しては特許出願しており、研究成果は11013日に大阪で開催された日本免疫学会で発表された。

 林原生物化学研究所では今後、「HOZOT」の性質・機能の研究、及びその作用メカニズムの解明を進めると共に、製薬企業や大学、研究機関とも共同研究を募り、多様な臨床応用の可能性を広く探っていくことにしている。また、一部の応用開発研究は、文部科学省の進める「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成事業」である「ナノバイオ標的医療の融合的創出拠点の形成」プロジェクト(拠点”岡山大学)の「次世代細胞治療の開発」としても進めていく予定。



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