アステラス製薬は1日、分子標的薬の研究開発に特化した米バイオ企業「OSIファーマシューティカルズ」に対し、1株当たり52ドルの現金で株式公開買い付け(TOB)を開始すると発表した。買収総額は約35億ドル(約3100億円)に上る見込み。アステラスは、低分子抗癌剤に強いOSIを買収することで、将来の重点研究領域と位置付ける癌領域のパイプラインを強化したい考えだが、OSIはアステラスの買収提案を拒否しているため、敵対的買収に踏み切った。国内製薬大手4社の中で、大型買収を実行していなかったアステラスだが、2010年問題を前に、癌領域の強化で一気に勝負に出た格好だ。
OSIは、分子標的抗癌剤「タルセバ」など、癌領域と糖尿病・肥満領域の研究開発に特化したバイオ企業。癌領域に豊富な開発パイプラインを持ち、第III相試験段階にIGF-1受容体阻害剤「OSI-906」、第I相試験段階にmTOR複合体阻害剤「OSI-027」、VEGF受容体-2阻害剤「OSI-930」がある。また、2型糖尿病・肥満症領域には、第I相試験段階のGPR119アゴニスト「PSN821」などの低分子化合物に加え、DPP-4阻害剤の使用特許を保有しているという。
アステラスは、07年に米アジェンシス社を買収し、癌領域で抗体医薬の強化に乗り出していたが、さらに低分子医薬に強いOSIを買収することで、重点研究領域と位置付ける癌領域の事業基盤を確保できると判断した。
既にアステラスは、09年2月にOSIに対し、書面で買収を提案していたが、OSIは実質的な協議を拒否。10年2月に改めて買収提案を行ったが、OSIは「企業価値を極めて低く評価している」として、実質的な協議を行わない意思を書面で表明していた。そこで今回、アステラスは40%のプレミアムを上乗せした価格を提案し、広くOSIの株主に理解を得るため、TOBに踏み切った。TOBは、米国東部時間で31日まで行う予定で、発行済み株式の50%超の取得を目指す。
OSIの09年度売上高は、4億2800万ドル(約380億円)、純利益は7600万ドル(約68億円)。