漢方・鍼灸の活用を検討してきた厚生労働科学研究班(班長:黒岩祐治国際医療福祉大学大学院教授)は、伝統医学の発展に向けた提言を発表した。研究班は、漢方・鍼灸の科学的なエビデンス確立を打ち出し、EBMへの転換を図るよう提言。医学部教育や薬剤師研修の充実といった人材育成に加え、生薬資源の安定的確保の必要性を指摘した。
提言は、体質にあった「オーダーメイド医療」実現のための基盤整備、生薬資源の安定的確保、国際ルール作りへの迅速・積極的な対応など5項目。特に、全人的医療を行う漢方・鍼灸治療の特徴を発揮するためには、基礎・臨床データを早期に蓄積し、EBMへの転換を図る必要があると指摘。これらのデータについて分析を行い、科学的なエビデンスを確立するよう提言した。また、エビデンス作りに向け、生薬と漢方製剤の品質標準化を検討する場の設置を求めた。
人材の育成では、医師国家試験に漢方を含めるよう要望すると共に、薬剤師については、漢方薬・生薬認定薬剤師制度などを活用した研修を充実させ、専門性を高めるよう提言した。
生薬原料については、大半を輸入に頼っている現状を踏まえ、国内栽培を促進する方向性を打ち出し、生薬資源の安定確保に向け、現在10%強の生薬自給率を2025年までに50%に高める目標を示した。
さらに、中国や韓国の主導により、伝統医学の国際標準化や生薬資源の保護に向けた国際的なルール作りが進められているとして、日本も国家戦略的な見地から、政府主導で戦略的な交渉・対応を進めるよう求めた。