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柳澤伯夫厚生労働大臣と日本経済団体連合会の懇談会が11日、都内のホテルで開かれた。厚労省トップと日本経団連幹部が一堂に介し、厚生労働行政について会合を持つのは初めて。懇談会で柳澤厚労相は、社会保障制度や医療制度の改革は、その積み上げが大切と、財界側に理解を求めた。また日本経団連からは、医薬品産業の国際競争力強化や基盤整備などについても要望が出された。
懇談会は、日本経団連の御手洗冨士夫会長、柳澤厚労相とも就任間もないこともあり、互いの顔合わせの意味も込め、御手洗会長側の要請により実現したもの。日本経団連は御手洗会長をはじめ、武田國男副会長(武田薬品会長)ら幹部19人、厚労省からは柳澤厚労相以下、副大臣、大臣政務官、事務次官、厚生労働審議官、各局長ら幹部22人が出席した。
懇談会ではまず御手洗会長が、小泉構造改革によって景気は回復し、確実に改革が進んでいると強調。その上で、雇用問題や社会保障制度に関しては、経済成長があって制度が安定的に運営されるが、グローバル化の進展や少子高齢化が進む現状を踏まえ、「成長だけでなく、規制改革や構造改革を引き続き進めることが必要だ」と述べた。その後、柳澤厚労相が雇用問題と社会保障を中心に、厚労行政の現状を説明した後、意見交換という形で進められた。
柳澤厚労相は社会保障制度に関しては、06年の改革効果は07年に現れてくると指摘。また社会保障改革は、公共事業のように一律何%カットは難しいとし、「必要な改革を積み上げていくしかない」という、従来からの見解を改めて示した。
意見交換では、日本経団連側からは社会保障に関し、“身の丈にあった制度”が必要だという意見や、医療制度については、保険免責性や高齢者自己負担の適正化などの提案がなされた。また、介護保険についても、被保険者の拡大や負担と給付の一元化を求める意見が出された。
これを受けて厚労相は、“身の丈にあった制度”は基本的に同じ認識とし、医療制度改革についても引き続き進めていく考えを表明した。
また、今月末には公表する将来人口推計の見通しについて厚労相は、「かなり厳しいものになる」との見方を示し、将来の労働力人口減少に対し、「女性や高齢者の活用で2030年までに500万人減にとどめられれば、生産性向上でカバーできる」として、経済界に協力を求めた。さらに厚労相は、少子化対策には安定的な雇用が不可欠との見通しを示し、こうした点にも理解を求めた。
一方、日本経団連側からはさらに医薬品産業についても意見があり、安倍内閣が進めるイノベーション25の筆頭に医薬分野が挙げられていることに基本的に賛成としながらも、すでに中国、韓国、インドなどのアジア諸国でも、医薬品産業に力を入れていることから、国として研究開発の基盤整備などを推し進めるべきと要望された。
これに対し松谷有希雄医政局長は、医薬品産業の強化は保健衛生の水準の向上だけでなく、経済にも大きく貢献するものだとの認識を示し、指摘された点については積極的に取り組むとの考えを示した。