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後発医薬品の科学的検証をめぐるシンポジウムが、第27回日本臨床薬理学会年会で開かれた。シンポジウムでは、後発品と先発医薬品には「同等性がある」との見解が主流を占めたが、一方で情報提供の不備や品質や効果を疑問視する声が、臨床現場から挙がっているとの指摘もあり、次のステップに向けて、科学的検証に取り組む必要性が改めて訴えられた。
後発品と先発品の同等性をめぐっては、科学的検証を含めてこれまでにも多くの議論が交わされてきた。ただ、まだ議論が収束したとは言えないのが現状。磯部総一郎氏(厚生労働省保険局医療課薬剤管理官)はその状況を踏まえ、「後発品の審査は厳正に行われており、明らかに品質や有効性の劣るものを承認しないのは当然」との立場を強調した上で、「先発品と後発品は(治療学的に)同等である」とした。
緒方宏泰氏(明治薬科大学薬剤学)も製剤学の立場から、後発品の製剤が変化していなければ、臨床上の有効性、安全性は確保できるとした。また、昨年は先発品との血中濃度の違いが話題になったが、「臨床上の有効性、安全性が余裕を持って確保できれば、その範囲内での差異は臨床的に意味がない」と断言し、後発品の同等性には問題がないとの立場を強調した。さらに緒方氏は、「後発品の議論は、より科学的な検証を目指した次のステップへ進むべきだ」とも語り、混乱する同等性の議論を収束させたい考えもにじませた。
高橋將喜氏(仙台逓信病院薬剤部)は、後発品の臨床的評価を実施したところ、採用した後発品の有効性と安全性が、先発品と臨床的に差がなかったとの結論を示し、「先発品と臨床的に差異がない後発品は、患者にとって有益である」と語った。
ただ、後発品に関しては、配合変化・のみ合わせ・相互作用に関する情報提供が少ない現状が見られることから、「相互作用の情報がないことは、臨床現場にとって非常に不安。情報収集・提供体制を早急に構築すべきだ」と訴えた。
一方、追加発言した内田健夫氏(日本医師会)は、後発品の問題点について、医師を対象に実施したアンケート調査の結果を示した。それによると後発品の「品質に問題あり」の回答が54%、同じく「効果に問題あり」が69%に上り、臨床現場で効果の実感が少ない実態が浮き彫りになったと報告。この結果を受け内田氏は、「医師が安心して後発品を処方できるかが疑問であり、問題ありの回答が多いことを重く受け止める必要がある」と指摘した。
名郷直樹氏(地域医療振興協会)も追加発言で、「(先発品と)ほとんど同じという情報ばかりが増えてくると、医療現場は逆に不安になる。全く同じ薬でない以上、当事者がきちんと検証しなければ、上手く使うことができないのではないか」と話した。