厚生労働省は9日、次期診療報酬改定で「全体としては10年ぶりのネットプラス改定を行うことが必要」とする、見解を発表した。薬価改定と材料価格改定で捻出が見込まれる、約5000億円を超える規模の財源を確保したい意向を示し、財務省との予算折衝に臨む姿勢を明確にした。
見解は、政務三役の基本的な考え方を整理したもので、社会保障審議会医療保険部会、医療部会の基本方針がまとまり、改定率をめぐる中央社会保険医療協議会の議論が収束したことを踏まえ、公表された。当初予定していた具体的な改定率については、今回は記載を見送った。
ただ、本体プラス・全体マイナスだった前回改定を、「必ずしも十分な効果が出ていない現状にある」と指摘。具体例として、有識者の研究でDPC対象病院の年間赤字が、総額3500億円と推計されていることや、医療経済実態調査の結果、緊急入院患者を年間200人以上受け入れる病院の総損益差額が、1施設当たり約1億円の赤字だったことを示した。
さらに、三党連立政権合意や民主党政権公約を踏まえ、「国民の安全・安心を支える医療の再構築」に取り組む必要性を強調。急性期を中心とする入院医療に、優先的・重点的に診療報酬を配分すると共に、受け皿となる後方病床・在宅療養の機能を強化する考え方も提示した。
今後取り組むべき具体的な課題として、▽手術等の医療技術の適正評価▽医療の高度化への対応▽医療補助業務の充実等を通じた勤務環境の改善▽医療安全への取り組み――を挙げた。