社会保障審議会医療保険部会(部会長:糠谷真平国民生活センター顧問)は25日、次期診療報酬改定の基本方針を大筋でまとめた。重点課題に「救急、産科、小児、外科等の医療の再建」「病院勤務医の負担の軽減(医療従事者の増員に努める医療機関への支援)」を掲げ、前回改定に比べて救急や外科の充実、コメディカルの評価を明確に示した。部会長の責任で細部を調整し、正式決定する。
改定の方向性については、「医療費全体の底上げ」と「限られた財源の中で医療費の配分の大幅な見直し」の両論を併記。補助金との役割分担を踏まえる必要性も指摘した。
重点課題に対応するため、救急患者受け入れ施設や新生児の救急搬送を担う医師の評価を求めると共に、有床診療所を含めた後方病床・在宅療養の強化も要請。勤務医負担軽減の観点から、薬剤師の役割の評価も検討項目に挙げた。
また、[1]充実領域の適切な評価[2]患者に分かりやすく、安心・安全で生活の質に配慮した医療[3]医療と介護の機能分化と連携[4]効率化領域の適正化--の4視点で課題を整理。充実領域には、新たな医療技術や医薬品のイノベーションを盛り込んだ。
患者の理解や安心・安全の視点では、医療の透明化、医療安全対策の推進、心身の特性等に配慮した医療の評価を提言。機能分化と連携については、施設・在宅の連携のほか、職種間連携の評価の必要性も指摘した。効率化領域として、後発品使用促進、実勢価格を踏まえた医薬品・材料・検査を位置づけた。
このほか、後期高齢者医療制度の廃止に先行して、75歳以上に限定した点数の見直しを求めている。
また、この日の部会では、行政刷新会議ワーキングチーム(WT)が評決を下したOTC類似医療用薬の保険外しに批判が相次いだ。今後の取り扱いは、財務省との予算折衝で決定される。ただ、現行の保険給付ルールでは対応できないため、制度改正が必要で、例えば選定療養の枠組みを使う場合には、健康保険法を改正することになる。
OTC類似薬の保険給付からの除外は、財務省が「湿布薬・うがい薬・漢方薬などは医師が処方する必要性が乏しい」「高齢者の半分近くがのみ残しており、無駄に公的支出が行われている」ことを理由に主張してきた。今回、事業仕分け初日の11日、除外範囲について「今後も十分な議論が必要」とコメントを付し、WTとして見直しを行う方向性を打ち出した。
これに対し医療保険部会の委員からは、「患者負担の増大につながるため反対」(岩月進日本薬剤師会常務理事)、「副作用の面からも問題がある」(藤原淳日本医師会常任理事)、「かぜや腹痛は、ドラッグストアーに行って治せと言わんばかりの感じだ。納得できない」(見坊和雄全国老人クラブ連合会相談役)など、不満が噴出した。
なお、事業仕分け結果について長妻厚生労働相は、「最終的には私が、あるいは内閣が責任を持って判断をする」と国会答弁で述べている。