民主党が目玉として進める2010年度の概算要求の無駄等を洗い出す事業仕分けが、政府の行政刷新会議ワーキンググループのもと、今月11~27日まで行われている。17日時点までに「廃止」や、「予算計上見送り」と判定されたり,「予算の縮減」が求められた事業を加えると,削減額は4000億円を超えるものとなった。
事業仕分けの模様は公開とされ、インターネット動画等でもライブ中継で配信された。テレビ、新聞などの報道でも連日、その状況を伝えているが、やはり、納税者である国民が、国家予算の編成プロセスを「可視化」できる環境にしたということが、今回の大きなポイントになるのかもしれない。
現在、日本の財政状況が危機的状況にあり、作業自体は、その国家予算の精査という性格上、経済効率性に傾いた判定結果が多い印象はあった。11日に行われた厚生労働省関連の事業仕分けでは、「後発品のある先発品の薬価」や「診療報酬の配分」などの見直しが決定した。ただ、これらは、医療保険制度と密接に絡む項目だけに、いわゆる各論部分だけを俎上に上げ、1時間程の議論の中で、結論づけることは難しい。
「後発品」をめぐる議論に絞っても、評価員(仕分け人)の考え方は、「経済的」視点で「いかに安く薬を国民に提供するか」という論調に終始していた。この場では、厚労省側は、長期収載品目の特例引き下げの仕組みは継続していくが、後発品へのシフトを優先させていく方針を示した。ただ、行政主導による推進ではなく、国民、医療関係者、保険者の理解を得て進めたいという考えを説明するにとどまった。評価員の意見も長期収載品薬価の引き下げで一致したものの、実効性のある具体的な施策にまでは言及できなかった。
削減ムード漂う事業仕分け討議の中で、印象的だったのは「安ければいいというのは暴力的」とし、識別しやすい注射剤など、安全性や機能性において、先発品よりも優れた後発品もあり、それを薬剤師の責任で認める必要性を訴える仕分け人の意見があったことだ。先発品特許は、申請時の約15~20年前の製剤技術で製造されたもの。現在は、製剤技術や添加物も進化し、さらにのみやすさなどの付加価値を加えた後発品も上市されるなど、「従来から進化した部分」は少なくない。
この意見は、議論の中では掻き消された感じだったが、後発品の使用促進に向けて,大きな鍵を握るのではないだろうか。
現在、学会などでも後発品の品質に関連する発表に混ざって、「価格だけで
はない」後発品選択基準として、後発品の有用性を確認する発表も増えている。福岡県のジェネリック使用促進協議会が年度内に作成する「汎用GEリスト」でも、苦味等の軽減、口腔内崩壊錠の設定、安定性の延長などの製剤改良に基づく特徴の詳細、医療機関の使用実績や評価を掲載するという。
国の目標である「2012年度に後発品数量シェア30%以上」は、後発品のある先発品が全て切り替わっても55%というところから考えられた数値。強制措置や自己負担に訴えずに取り組める、実現可能な数値ということのようだ。
まずは、後発品の信頼を高めるプロセスを重視し,国民の支持を得て、自然に定着していくのを期待したい。事業仕分けに伴い、どれだけの国民が関心を持つようになるか、そこからがスタートだ。