特許庁は、特許・実用新案審査基準を改訂し、医薬発明の要件を緩和した新基準の運用を今月から開始した。医薬品の新たな用法・用量が特許として認められるようになり、医薬品の保護対象が拡大したことで、先発品メーカーにとっては、副作用軽減や服薬コンプライアンス向上を意識した医薬品の改良が、後押しされることになる。しかし、後発品メーカーからは、先発品の市場独占の長期化や、改良前の後発品の市場性への悪影響を懸念する声が出ている。
今回の基準改訂は、政府の知的財産戦略本部先端医療特許検討委員会が、「専門家の予測を超える効果を示す新用法・用量の医薬の発明を『物』の発明として保護すべき」と提言したことを受けたもの。知的財産戦略2009にも重点施策の一つとして盛り込まれた。
用法・用量に関する特許は、これまでも投与間隔・投与量について認められていた。ただ、特殊な遺伝子型の患者に特に有効なことが明らかな場合など限定的で、開発を断念する製薬企業もあった。
一方、新基準では、従来品と比べて効果が高くても、通常予測できる範囲内であれば認められないといった、他の製品と同様の一定条件はあるものの、投与時間、投与手順、投与量、投与部位といった用法・用量を広く保護する。
そのため、製薬企業の開発意欲を高めると共に、患者にとっては選択肢が増える可能性が出てきたが、後発品メーカーは危機感を示している。
基準改正の前段階のパブリックコメント募集で、日本ジェネリック製薬協会は、▽新しい用法を見出しても新規の「物」になるはずがない▽国の後発品使用促進策に逆行し、薬剤費削減を阻止する▽この種の発明に新規性を認めた国は世界に存在しない――と指摘。さらに、新基準を導入する場合には、先発品と後発品でバラツキのない審査を行うよう要望していた。
これに対し特許庁は、先端医療特許検討委員会の提言に沿って、副作用低減や患者QOL向上の観点で、用法・用量の特許化を進める考えを示し、審査の際には判断の統一的運用に努めることとした。
なお、日本製薬工業協会はパブコメで、他剤と併用する用法・用量を、単剤の特許として認めるかを明確にするよう求めた。特許庁は、「複数の医薬を併用する場合の単剤に係る発明における併用の場合も含め」新規性・進歩性を認めるとの見解を示した。