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慶應義塾大学(塾長安西祐一郎氏)と共立薬科大学(理事長橋本嘉幸氏)は20日に会見し、2008年4月の合併を目指して、協議を開始することで合意したと発表した。今後は、「両法人合併推進会議」(仮称)を立ち上げ、学生の受益を最優先に、双方の歴史と現状を尊重し、かつ双方に不利益が生じないように、共立薬大という名称や合併方法なども含め、具体的な検討を進めていく。
共立薬大では従来よりもさらに高い水準で、医療及び薬学における教育研究を推進していくという考えの下、今月6日、慶大に対して正式に合併の申し入れを行った。
これに対し慶大も、合併が慶大の質的充実・発展につながると判断。20日の評議員会で、[1]法人の合併を前提として協議に入る[2]07年3月をメドに、合併協定書を締結する[3]合併協定書を締結した場合には、08年4月1日をメドとして、慶應義塾に薬学部及び大学院薬学研究科を設置する――ことを決定した。
合併の背景に関して安西塾長は、「総合大学としての慶大の9学部、11の全研究科および学内研究組織は、薬学教育、薬学研究、薬学を通じた社会貢献に関して、それを発展、進化させることが可能だ」と説明。「合併に伴い、連携や研究者交流による研究水準の向上が期待され、質の高い学生の確保など、私学が直面している競争的環境にも、極めて有利に作用することが期待される」と述べ、「双方に大きなメリットがあることを理解してほしい」と強調した。
共立薬大が合併を希望した理由について橋本理事長は、「医療の中で実力を示すことのできる知識を持つ薬剤師を輩出することが薬科大学の使命。それには実務実習が重要になる。附属病院を持たない共立薬大のような単科薬科大学の場合は、実習を外部の病院にお願いせざるを得ない」とした上で、「慶大には医学部があり、附属病院があり、薬剤部がある。慶大との合併が成立すれば、実務実習で絶大な力を発揮すると考えた」と語った。
また、共立薬大では4年制学科も設置している点に触れ、「4年制では創薬などを中心とする薬学研究を柱に据えており、慶大と合併できれば、医学部や理工学部などと共同して、立派な成果を挙げる人材を育成できると思う」と述べた。
合併に伴う共立薬大の名称に関して橋本理事長は、「そこが、われわれにとっても悩みのところ。76年間の伝統を持つ共立薬科大学には、それに見合った卒業生がおり、そうした人たちの心証、さらに教員の考え方などを踏まえると、名前は極めて重要なポイント」との認識を示し、「名前を残すか残さないかなど、どういった形にするのか、今後の慶大との話し合いを通じて考えていきたい」と話した。
薬学単科大学と総合大学の合併という今回の構図は、薬学6年制に伴う長期実務実習の実施、少子化による受験生・入学者の減少などに対し、薬科大学が生き残りを模索した結果と言える。共立薬大の悩みは他の薬科大学にも共通するもので、総合大学も薬学部を持つことによって、受験生のニーズに幅広く応えることが可能となるだけに、こうした動きが他の薬科大学へ波及していくことも考えられる。