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第21回「アジア薬剤師会連合学術大会」(FAPA横浜大会)が「医療における新たな役割」をメインテーマとして18日に開幕した。明日21日までの4日間、パシフィコ横浜で開かれる。日本開催は26年ぶり3回目のことで、アジア各国から約1300人の薬剤師が参加。薬学教育、患者サービス向上、薬物治療のグローバルスタンダードなどに関するシンポジウム、ポスター発表が行われ、活発な発表・議論が展開されている。
21世紀の薬剤師を議論
重要性高まる医療での役割
初日に開かれた開会式では、組織委員長である中西敏夫日本薬剤師会会長が、「大会を通じて21世紀の薬剤師が相互に情報交換を行い、アジアおよび世界的な視野に立った21世紀の薬剤師のあり方について、議論を深めてほしい」と述べた。
続いてFAPA会長であるピーター・ブランド氏があいさつに立ち、「FAPAが設立された42年間の推移を見てみると、薬物療法に関して、より専門性の高いサービスが提供されるようになっている。薬剤師はより重要な役割を果たすことの必要性を認識しなくてはいけない」と、薬剤師が医療の中で担うべき使命がが大きくなっていることを強調した。
開会式では石館賞の授賞式も行われた。開局、病薬、教育、科学、製薬の各分野で、FAPAに貢献した薬剤師に与えられる賞で、開局では日本の生出泉太郎氏(日薬常務理事)が受賞した。
資格に格差生じ混乱も
パロ氏が各国の事情を報告
授賞式に引き続いて、前FIP会長のジャン・パロ氏が「21世紀の薬剤師の役割」をテーマに基調講演を行い、世界各国の保健事情やOTCの取り扱いを紹介した。
パロ氏によれば、カナダのケベック州では、薬剤師が医師の作ったケアプランに則り、新薬の選択や用量の調節をすることができる。コスト削減意識の高いアメリカでは、薬剤師が医師のような仕事をするケースもあり、州によっては成人のワクチン投与まで行う地域もあるという。
一方イギリスでは、薬剤師と看護師が一定の研修を受ければ、処方できるという制度が確立された。薬剤師などの処方権には2種類あり、1つは医師のケアプランの範囲内で補助的な処方をするもの。2003年4月からスタートした制度で、現在、薬剤師で550人、看護師では6500人がこの資格を有しているという。
もう1つはケアプランに基づくことなく、薬剤師が独立して処方できる資格であり、今年の5月からスタートした。
パロ氏は「薬剤師による処方を可能としたこの制度は、大きな問題をはらんでいる」と指摘。「薬剤師の中に、処方ができる人とできない人の2種類ができてしまったことになり、患者のケアが混乱している」とし、1つの資格に格差をつけることの危険性を訴えた。
同氏は各国のOTC事情も説明。日本は改正薬事法によって、OTCを3つの区分に分類したが、国によっては全く区分を設けていないところもある。代表がヨーロッパで、区別することによって薬剤師がコントロールできなくなる可能性もあるため、区分は設けられていないと説明した。