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川崎二郎前厚生労働大臣は16日に都内で講演し、政府の歳出入一体改革に基づき、社会保障費を5年間で1・1兆円(国費ベース)削減するという方針について、今年の削減は主に雇用保険で対応するとしたものの、来年以降の議論では「どうしても薬価からという声が出てくることは間違いない」との見方を示した。
講演は日本医薬品卸業連合会による「2006年度医薬品卸業経営セミナー」で行った。その中で川崎前大臣は、医療や流通現場の負担も考えると「制度が毎年変わるのは良くない」としながらも、歳出入一体改革の中では薬価に「毎年改定の圧力がかかってくる」と、財源を薬価に求める動きが引き続き出てくることを指摘した。
今年の削減論議では、景気の上向きで失業保険給付が減っていることから、それを含めて対応できるとし、「医療関係者の方に迷惑をかけることはない」と断言。さらに厚労相時代の話として、来年度の薬価制度見直しについて「財源のためにやるのは、私の権限でやめさせました。安倍総理がどうするかは分かりませんが、来年(の改定)はないと思います」とも述べた。
国家財政の観点からは、借金を返済しつつ相応の社会保障制度を維持していく財源を確保する手段について川崎氏は、労働力人口が減少している中で、勤労者からの所得税で確保するのは難しいとし、国民から広く集める消費税の議論を積極的に行う必要があると強調。「私は政治家として、消費税を正面から申し上げていきたい」と述べると共に、「きっちり議論しない限り、公共事業、地方交付税と並び、社会保障はできるだけ削減、薬価もできるだけ削減という圧力が強まってくる」と指摘した。
医薬品産業にも触れ、世界的にも劣っている日本の開発・承認のスピードを速めることが大きな課題との認識を示し、国際共同治験の推進による世界同時開発・同時承認の実現、十分な研究開発投資を行えるような製薬企業の体質強化などに取り組みが必要だとした。国内メーカーの規模についても「世界ランクで10位以内に入る企業をつくらなければ国際競争で勝てない。この辺を認識いただきたい」と訴えた。