厚生労働省は、新型インフルエンザワクチン(A/H1N1)の接種方法の素案をまとめた。接種順位の最上位に医療従事者を位置づけ、優先接種対象者に国内産ワクチンを使用することや、輸入ワクチンについては、12月下旬以降にも小中高生や高齢者に使用できるよう、薬事・食品衛生審議会で、手続きの一部を簡素化する特例的な承認を行うことなどを盛り込んだ。既に、パブリックコメントを募集しているほか、専門家や患者団体から意見を直接聴き、今月中にも具体的方法を正式決定する。医療従事者のワクチン接種は10月下旬から開始する方向だ。
ワクチンの優先接種については、流行のピーク時であっても医療提供体制を維持するために、インフルエンザ患者の診療に従事する医療従事者を最優先することを明確にした。厚労省は、約100万人の医療従事者が該当するとみている。診療科などは限定せず、自己申告でワクチンを提供する予定だ。
次に優先接種の対象としたのは、感染すると重症化や死亡につながりやすい妊婦や、喘息、高血圧、糖尿病などの基礎疾患を有する者。最終的には医師が判断することになるが、妊婦は約100万人、基礎疾患保有者は約1000万人を想定している。また、1歳以上で就学前の小児約600万人、1歳未満の小児の両親約200万人にも優先的に接種する。厚労省は当初、6カ月以上の小児を優先対象とする考えだったが、学会の要望を踏まえて1歳以上に変えた。
このほか、国内発症者の7割、入院患者の8割を占める10代以下の児童・学生や、重症化リスクの高い高齢者については、優先接種者に続く第2グループとして、健康な一般現役世代より先にワクチン接種を行う。小中高生約1400万人、65歳以上約2100万人が対象になる見込み。
国産1800万人分は確保‐安全性情報を迅速に収集
ワクチンの確保については、優先接種者に使用する国産の出荷を10月下旬以降に開始し、来年3月までに1800万人を用意する。また、主に第2グループへの使用を想定して、12月下旬以降に不足分を輸入する考え。
国内産ワクチンは、季節性と同様の行程で製造するため、新たな薬事承認は必要としないが、ワクチン株が季節性と異なるため、医師主導治験で臨床試験を行って安全性や有効性を確認し、10月以降の出荷に間に合わせる。
可能な限り10mLバイアルによる製造を進める計画だが、厚労省によると、製造効率が悪くても1mLバイアルの生産も進め、1800万人は出荷が可能だという。
輸入ワクチンについては、薬事法第14条の3で規定する特例承認を、緊急的に適用する方向だ。現在、厚労省は海外企業2社と緊急輸入について調整している。海外の臨床試験成績から、ある程度の有効性は期待できるものの、いずれも国内での使用経験のない免疫補助剤入りワクチンで、現段階では海外でも未承認のため、国内外で通常使用の実績がない。また、製造法、投与経路なども国内ワクチンとは異なる。
そのため、特例的に通常の承認の要件を緩和する場合であっても、国内で臨床試験を行い、薬食審で、海外臨床試験成績等の資料や国内試験中のデータを使って安全性を確認する。さらに、安全性に問題があれば使用を中止することも念頭に入れ、承認後も国内外の臨床試験の結果を引き続きフォローする。