厚生労働省の「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」(座長:嶋口充輝慶応大学大学院経営管理研究科教授)の会合が15日、都内で開かれ、公正取引委員会事務総局の片桐一幸取引部取引調査室長が出席し、9月に公取委がまとめた医療用医薬品の流通実態に関する調査報告書をもとに、公取委の医療用医薬品の流通の考え方を示した。報告書では、医療機関は高いコスト意識を持ち、メーカーから直接購入も示唆する内容が明記されている点について片桐氏は、公正・自由な競争を促進する観点から望ましいものであり、法的拘束力はないとの見解を示した。ただ、厚生労働省医政局の武田俊彦経済課長は「過去の姿に戻してはならない」と指摘、さらに議論を進める意向を示した。
公取委の報告書は、医療用医薬品に関する流通のうち、後発品と医療機関の共同購入を中心に実態を調べたもの。このうち後発品の使用促進に関して、引き続き厚生労働省による使用促進策を進めるよう指摘し、後発品メーカーには、安定供給など医療機関の懸念を払拭するような取り組みを求めた。また、医療機関の共同購入については、医療機関も購入する医薬品の品目数を絞り込み、1品目当たりの購入量を増やすと共に、メーカーからの直接購入も検討するなど、より高いコスト意識が望ましいなどとしている。
意見交換の中でも委員から、メーカーとの直接交渉に関して質問が出されたが、片桐室長は流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針を引用し、「メーカーの直接の取引先が単なる取り次ぎとして機能し、実質的にメーカーが販売している場合には、メーカーが当該取引先に対して価格を指示しても通常違法にならない」との見解を示した。
また、報告書はあくまでも競争政策の観点からの指摘であり、この報告書に法的拘束力はないとも述べた。
こうした意見交換を踏まえ発言した武田経済課長は、公取委の考えに理解を示しつつも、医療用医薬品の流通に関しては、「過去の経緯がある」と指摘。具体的には、仕切価制度に移行した当時、過度の薬価差や価格のバラツキ、医療機関の薬価差依存経営などが課題とされたことを例に挙げて「過去の姿にだけはもどってはならない」とし、流改墾でさらに議論を深めたいと語った。