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大学発バイオベンチャー協会(BVAU)の水島裕会長は2日、都内で開かれた同協会総会で、医薬品・医療機器の研究開発、審査をスピードアップを図る提言を発表した。医薬品医療機器総合機構の審査業務職員の増員と質の向上、治験を迅速・安価・正確に実施するための具体的提案が柱。総合機構については人員倍増と製薬企業からの人材登用、さらに大病院を中心にした臨床試験拠点の整備などを求めている。
水島氏は、新薬の研究開発・承認には9018年の期間と、260億0360億円の費用がかかると前置き、「日本の医薬品開発と審査はコストが高く、スピードが遅い、時として質も悪い」といった面がありとし、日本で治験を行い承認申請するメリットは小さいと言い切った。
このため日本で開発されたものでも、一部の基礎試験と大部分の治験を欧米で行うケースが多くなり、日本発の製品も含め、画期的新薬の実用化は日本がいつも最後で、日本の患者の不利益につながっていると指摘。特に開発スピードについて、「経験上、東欧に比べ約5倍かかる」と述べ、開発のスピードアップが求められていることを説明した。
こうした状況を改善するため、まず総合機構の審査業務職員の増員と質向上が不可欠だとし、現在の約300人体制を、600人体制にに増員することを求めた。増員費用に関しては、審査料の値上げや業界からの会費で賄うのも一つの方法だと提案した。
また、審査の質向上には、現在制限されている製薬企業の開発経験者採用も進めるべきだと主張。「有能な人材を採用するのため、米国FDAと同様、医薬品開発当事者の年月を置かない採用と、元の職場への復帰を容易にすべき」と、採用制限の撤廃を求めた。
◇100病院を選定し拠点化
さらに水島氏は、治験を“早く・安く・正確”に行うためには、「(臨床試験を実施する)医療機関の体制を整えることが必要」とし、6項目の具体的提案を示した。
[1]約100施設の大病院を選び、治験を含む臨床研究を充実させるための環境を整える。
[2]選ばれた大病院は診療、研究、治験を三つの柱とし、治験はむしろ事業として展開する。環境整備については国も支援し、整備が完了した後は独立経営とする。
[3]治験費用は病院に入れるのではなく治験グループに支払い、病院には適切な料金を支払う。
[4]アジア共同治験や国際共同治験を推進する。
[5]医療機関への治験申し込み書類や患者調査票などの主要部分を統一し、可能であれば電子化する。これによりモニター事業が極めて容易になる。場合によってはJ”GCPに示されているモニター派遣を弾力化する。
[6]治験審査委員会(IRB)については、全般的な審査を中央IRBで行い、個々の医療機関のIRBは、申し込まれた治験を受ける能力があるかどうかを判断する。