厚生労働省は25日、「暮らしと社会の安定に向けた自立支援」をテーマにした2009年版厚生労働白書を閣議に報告した。雇用と福祉の両面を充実させ、個人の自立を支えた08年度の厚労行政の実績を整理している。ただ、今後の方向性については、セーフティネット機能を「今後も一層充実させ、強化していく必要がある」とするにとどまった。
今回の厚労白書は、08年度後半の急激な経済情勢の悪化による就業や所得の変化に着目し、最終的な所得保障という社会保障の機能に焦点を当てた内容となっている。特に経済危機の影響を受けた若者、高齢者、障害者、母子家庭、非正規労働者、生活困窮者それぞれについて、現状・課題・行政の取り組みを対応させて解説することで、個別の雇用対策や福祉施策の役割を分かりやすく説明している。
例えば、非正規労働者につては、現状として、絶対数の増加だけでなく、自分の収入で生活を賄う派遣や臨時の労働者が増えていることを指摘した上で、この1年間で22・9万人が雇用止め、または打ち切り予定となっており、住居の状況が判明した者のうち、約3400人が住居を喪失していることを説明。
課題として、職業訓練や再就職支援と共に、住居の確保など生活安定のための支援を挙げた。現状や課題に対応した取り組みについては、雇用保険の受給資格要件の緩和、職業訓練の拡充や生活資金の貸付、雇入れ企業への助成を行う基金創設、住居喪失離職者に対する住居費や生活費の貸付け、雇用調整助成金制度の運用見直しを紹介している。
ただ、施策の効果の検証や、評価についての言及は少ない。全体を通じたまとめとして、「生活困難に直面した場合に、生活に困窮してしまわないうちに、雇用施策と福祉施策が相まって直ちに支援の手が差し伸べられ、自立を維持できるようにすることがセーフティーネットの重要な役割」「今後も一層充実させ、強化していく必要がある」「社会保障がセーフティネットとして機能し、個人が持てる力を発揮できるようにしていく必要がある。このことを通じて個人の自立が支えられ、自立した個人の支え合い、連帯により社会保障が支えられている」と総括している。