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MRは薬剤師の重要な職能

2006年11月08日 (水)

 今春から薬学教育6年制がスタートした一方で、医薬情報担当者教育センターがこのほど発表した2005年度「MRの実態および教育研修の変動」調査報告書では、MRの専攻分野で薬剤師の占める割合が、さらに低下している実態が明らかになった。調査を始めた2000年度には19・6%だったが、05年度には13・5%まで下降した。また、薬学教育協議会の05年3月就職動向調査でも、製薬企業に就職した卒業生は7・2%で以前の30%とは比較にならないほど低い。

 MR教育センターの平林敏彦常務理事によれば、医療現場では薬剤師MR、薬学をベースに持つMRを増やしてほしい意向が強いようだ。MRを薬剤師の職能とする認識が低いのは、大学側の理解不足もあるのではと考え、センターはこれまで10大学を訪問し話し合ってきた。大学側はMRに対する誤解もあってか、6年制ではMRという職業を視野に入れておらず、4年制を併設している大学で若干の意識がある程度だという。

 その意味では6年制教育は、薬剤師MR、薬学を学んだMRをさらに減少させる逆風なのだろうか。「そうではない」と平林氏は断言する。新設大学が増え続け、定員はかつての5割増にまで膨れ上がり、病院や薬局への就職が厳しい状況に陥ることが予想されるからだ。そこで、薬学を生かせる職業として、MRの出番となる。

 加えて6年制では、半年間の実務実習が義務づけられるため、医薬情報を提供する相手となる医療機関や薬局について、実情を知ることができるというメリットもある。

 平林氏は、「薬剤師はMRや調剤など、一生同じ職業でなくてもいいはず。どちらから転職しても、それまでの経験が生かせる。相手が患者なのか医療機関なのかの違いであり、医薬情報を提供することは同じなのだから」と訴える。定年を迎えたMRが開局し、高い評価を得ている事例もあるという。MR時代に培った幅広い知識とコミュニケーション能力の賜といえよう。

 製薬企業には、“領域特化型”という高度な医薬情報を担うMRも出現している。こうした状況から、「ジェネラルも当然大切だが、特定領域に薬剤師が就くことで、今まで蓄積した知識がさらに発揮できるだろう」と強調する。

 薬剤師を目指さない薬学生の就職を考える中で、大学側は選択肢の一つとしてMRを重要な進路と認識し、薬学士がMR認定を取得しやすいようなインセンティブを求めているようだ。センターでは今後、4年制・6年制の薬学士に対するインセンティブの検討に着手し、08年のMR受験資格拡大、09年の新カリキュラム実施も念頭に置きながら、「行政と調整し、大学側の意見も聞いて3年以内には決めたい」意向だ。

 新薬学教育体制の下、医薬品産業に求められる人材を確保すると共に、何より薬学卒業生の進路選択の幅を狭めることがないように、製薬企業、MR教育センター、大学も含め、関係者が連携して取り組むことが望まれる。



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