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武田薬品の長谷川閑史社長は6日、都内で開いた中間決算説明会で、1兆6000億円余りの使い道について、「約1兆円は買収など戦略的投資に用いる」との考えを明らかにした。癌や糖尿病など重点領域の強化をはじめ、モデル動物や抗体医薬など創薬に必要な技術は「積極的に購入する」との姿勢を改めて示し、「いくつかの会社と前に進んでいるのは事実」と語った。一方、現在の事業規模で十分に国際競争できるとして「スケール・オブ・エコノミーは追求しない。自発成長が基本だ」と、規模拡大のための買収には否定的な姿勢を示した。
同社は、治験段階に導入できる新薬候補の数が「十分でない」(長谷川社長)として強化に取り組んでおり、その中で重点領域の新薬候補を持つ会社などとの提携や買収により、「新薬創出力の回復」を目指している。
その例として、05年2月に発表した米バイオベンチャーのシリックス社との統合を挙げた。同社は癌や糖尿病領域に強いほか、リード化合物の創出とその最適化に用いる最先端技術とされる蛋白質の高速X線結晶構造解析技術を保有しており、自社研究開発力との相乗効果を期待している。
そのほか、来年5月の三角合併解禁について「被買収会社の了承が必要で、敵対的買収にはならないのではないか。敵対的買収と結びつけるのは飛躍があるのではないか」との見方を示した。買収防衛策は特段講じず、「売り上げをマーケットの伸び以上にするなど、長期的、安定的に市場に評価いただくこと。これが経営者のやれること」と述べた。