PETを使って、第2世代抗精神病薬の脳内におけるドーパミンD2受容体占有率を調べた結果、局所差がないことを、伊藤浩氏(放射線医学総合研究所分子神経イメージング研究グループ)らが、世界で初めて明らかにした。
これまで、錐体外路症状など第1世代抗精神病薬の副作用は、大脳辺縁系以外の線状体などに薬が作用することによって出現し、第2世代抗精神病薬は大脳辺縁系に作用が集中することで副作用が少ないと考えられてきた。しかし、研究結果はそれを否定するもので、研究グループでは「抗精神病薬の副作用は大脳辺縁系への選択性より、服薬用量の設定が重要になることを示唆している」とし、PETを応用した抗精神病薬開発が有用だとしている。
研究は、10人の健常者を対象に、第2世代抗精神病薬服用前後のドーパミンD2受容体占有率を、PETを使って測定し、脳内局所差の検討を行った。
その結果、脳内各部位のドーパミンD2受容体占有率は、線条体で70%程度、大脳皮質領域で60%だった。PET測定の誤差をシミュレーションしたところ、線条体も大脳皮質領域でもドーパミンD2受容体占有率は同等で、大脳辺縁系に作用が集中していないことが明らかになった。
研究グループはこれまでに、第1世代抗精神病薬の一部に、用量設定が適切でないものがあることを突き止めており、今回の研究成果と合わせ、第2世代抗精神病薬の副作用発生頻度が少ない理由について、「用量設定が適切であるため」と結論づけた。少ない副作用で、治療効果を得るためには、第1世代・第2世代にかかわらず、抗精神病薬に適切な用量設定を行う必要性が示されたことになる。
研究グループは今後、抗精神病薬の開発段階でPETを利用して用量設定を行うなど、PETの臨床試験への応用が進むことを期待している。