厚生労働省の「未承認薬使用問題検討会議」は10月27日、ワーキンググループ(WG)から提出された国内未承認3品目に関する検討結果報告書を了承した。提出されたのは、[1]デシタビン:効能効果=骨髄異形成症候群、米国で2006年5月2日承認[2]ダサチニブ:成人慢性骨髄性白血病、フィラデルフィア染色体陽性の成人急性リンパ性白血病(前治療に抵抗性または不耐容)、米国で06年6月28日承認[3]イデュルスルファーゼ:ムコ多糖症II型(ハンター症候群)、米国で06年7月24日承認――の3品目。検討会の了承を受けて厚労省は、関係企業に対し、承認申請や治験を早期に実施するよう要請する。
【デシタビン】は、80年代から様々な用量で少数例の骨髄異形性症候群に対する第II相試験が行われ、一定の効果を持つことが知られている核酸代謝拮抗物質。
米国で行われたbest supportive therapyと第III相無作為比較試験等の結果では、有意差はなかったものの、同剤投与群で急性骨髄性白血病への転化、または死に至るまでの期間が、best supportive therapy投与群より長いことが示されている。WGでは同剤の早期治験開始を求めたほか、現在は代替薬がないため、類似のアザシチジンについても、併せて承認を要請すべきと指摘した。
【ダサチニブ】は、srcファミリーをはじめとするmultiple kinase inhibitorとして開発されたもの。慢性骨髄性白血病治療にはイマチニブが広く使用されているが、その投与によりabl遺伝子が点突然変異を獲得するとの報告もある。ダサチニブは、abl遺伝子の点突然変異がある細胞にも殺細胞効果を示すことが分かり、イマチニブ耐性の慢性骨髄性白血病患者で臨床開発が進められるようになった。米国の第II相多施設単群試験では、慢性期のイマチニブ耐性慢性骨髄性白血病患者を対象にした試験で、奏効率(細胞遺伝学的反応率)45%という成績も得られている。
WGでは、真の最大耐用量(MTD)は得られていないが、一定の割合で分子遺伝学的寛解が可能で、移植だけしか選択肢のないイマチニブ耐性、フィラデルフィア陽性の急性白血病に有効な治療手段になると結論。現在、国内で第I/II相試験が行われていることもあり、外国臨床試験成績や国内治験成績に基づいて、早期の承認申請するよう求めた。
さらに、発熱、胸水、発熱性好中球減少症、消化管出血、肺炎、血小板減少症、不整脈などの副作用が認められており、毒性管理も心電図をはじめとしたモニタリングを十分行うことも求めている。また、同様の効果が期待されるニロチニブについても、治験の促進が必要と意見があった。
【イデュルスファーゼ】は、遺伝子組み換えによりヒト線維芽細胞から産生された12S蛋白で、ライソゾーム病の酵素補充療法製剤。現在、ムコ多糖症II型の症状改善や進行抑制に効果を示す唯一の治療法と考えられている。
主な試験としては、欧米を中心とした無作為化二重盲検プラセボ対照多施設多国籍共同第II/III相試験があり、米国はこの試験により承認した。WGでは、重篤な過敏反応に注意が必要としながら、▽造血幹細胞移植に比べ、遙かに安全性が高い▽今回米国で承認された治験データに、日本人患者4人が含まれている▽重篤な疾患――などの理由から、欧米の臨床試験データによる申請を認め、迅速審査や早期の承認を期待するとした。
会合ではこのほか、▽タルク:胸水▽アレムツズマブ:慢性リンパ性白血病▽子宮頸癌の予防ワクチン――について、次回会合までにWGが検討することを了承した。 次回は1月に開催の予定。