厚生労働省は20日付で医療用薬24品目を承認し、日本で初めてアンジオテンシンII受容体拮抗剤(ARB)と利尿剤を配合した降圧薬「プレミネント」(万有製薬)、多発性骨髄腫治療薬「ベルケイド」(ヤンセンファーマ)、ヒトや動物由来蛋白を添加せず、病原体感染リスクを抑えた血液凝固第VIII因子製剤「アドベイト」が登場した。主な製品を紹介する。一部製品を除いて、順調に薬価収載されれば年内にも発売となる見通し。
【プレミネント錠”万有製薬】
高血圧症治療薬「プレミネント錠」(一般名:ロサルタンカリウム/ヒドロクロロチアジド)は、日本で初めてのARBと少量利尿剤の合剤。同剤は第一選択薬として用いるものではなく、他の治療で効果が不十分な場合に使用する。ARBと利尿薬の組み合わせは、日米欧の高血圧ガイドラインで推奨されている。同剤は1日1回1錠を投与する。
同社は、1錠で2種類の薬剤を投与することで、服薬コンプライアンスの向上、より良い血圧コントロールが可能になるとしている。
海外では欧米など82カ国で発売され、約1000万人の患者に使用されている実績があるとされ、2005年売上高(「ニューロタン」含む)は30億3700万ドル。
【タケプロン静注用30mg‐武田薬品】
消化性潰瘍治療薬「タケプロン静注用30mg」(一般名:ランソプラゾール)は、プロトンポンプインヒビターである「タケプロン」の注射用製剤。経口投与が不可能な患者における出血を伴う胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性ストレス潰瘍および急性胃粘膜病変に対して、1日2回投与で速やかな止血効果が確認されている。
タケプロンは、1991年に欧州、92年に日本、95年に米国でカプセル製剤が発売され、その後、水なしで服薬できるOD錠、ヘリコバクター・ピロリ除菌用の他剤とのパック製剤などを追加。現在、世界90カ国以上で販売されている。
【レキップ錠”グラクソ・スミスクライン】
「レキップ錠0.25mg、同錠1mg、同錠2mg」(一般名:ロピニロール塩酸塩)はパーキンソン病治療薬。同疾患に主に関連しているドパミンD2受容体系に選択的に作用する非麦角系ドパミン受容体作動薬。治験では、ドパミンを補充するLドーパ併用患者で、症状が悪くなるオフ時間の短縮効果が認められたのが特徴。
また、高齢者、軽度から中等度の腎機能低下患者でも、通常の用法用量に従って漸増することができる点は、他の同系統の薬剤と比べ利点といえる。
ドパミンを補充するLドーパ製剤を使用していない早期の患者、Lドーパを使用している進行期の患者のいずれでも第一選択として使用できる。
用法・用量は、1回0.25mgを1日3回から始め、1週ごとに1日量として0.75mgずつ増量し、4週目に1日量を3mgとする。
海外では欧米など60カ国以上で承認・販売されており、2005年売上高は1億5600万ポンド。
【アドベイト”バクスター】
血友病A患者治療用の遺伝子組み換え型血液凝固第VIII因子製剤「アドベイト」(一般名:ルリオクトコグ アルファ遺伝子組み換え)は、細胞培養・精製・製剤化の工程で、世界で初めてヒトや動物由来蛋白を添加せずに製造され、病原体などの感染リスクを抑えたのが特徴。250単位、500単位、1000単位を用意(溶解液は全て5mL)した。
アドベイトは、同社の第VIII因子製剤「リコネイト」と生物学的同等性が確認されており、同社は順次「リコネイト」を「アドベイト」に置き換える方針。
海外では欧米など31カ国で承認され、2005年売上高は約6億ドル。
【ベルケイド注射用”ヤンセンファーマ】
「ベルケイド注射用3mg」(一般名:ボルテゾミブ)は、再発または難治性の多発性骨髄腫(MM)治療薬。MMは治癒が困難で、再発を繰り返すごとに治療が難しくなる。細胞増殖や細胞死(アポトーシス)に関わるシグナル伝達関連蛋白質を制御する細胞小器官のプロテアソームを阻害することで効果を発揮する世界初の薬剤。
国内の臨床試験では、他の薬剤で有効性が得られなかった多発性骨髄腫患者で30・3%の患者に有効との成績が得られている。主な有害事象としては、骨髄抑制や消化器障害などが確認された。また、治験で1例と個人輸入による使用例で、急性肺障害が報告されている。今後、市販後全症例調査を実施し、安全性情報を収集していく予定。
欧米では約4万4000人以上の患者に投与され、再発または難治性のMMの標準的治療薬として位置づけられている。
【アルチバ静注用”ヤンセンファーマ】
「アルチバ静注用2mg/5mg」(一般名:レミフェンタニル塩酸塩)は全身麻酔用鎮痛剤。既存のオピオイド製剤に比べ、鎮痛作用の発現と消失が速やかであるため調節性に優れていることが特徴。投与速度を変更することによって手術などの状況に応じた痛みコントロールが容易になる。また、血液中、組織中の酵素である非特異的エステラーゼによって代謝されるため、肝臓や腎臓の機能が低下している患者にも使用することができるのも特徴だ。長時間投与しても体内に蓄積されにくいため、手術終了後の呼吸抑制といった遅発性の副作用の発現率が低いとされている。
【オキノーム散0.5%‐塩野義製薬】
癌疼痛治療用散剤「オキノーム散0.5%」(一般名:オキシコドン塩酸塩水和物)は、03年7月発売の「オキシコンチン錠」と同成分で、癌の痛みの治療で用量調節および突出痛が発現した際に、組み合わせて使用する即効性の癌疼痛治療用散剤。
癌の痛み治療は、同じ成分で同じ投与経路の持続性と即効性の鎮痛薬を組み合わせて使用することがWHOで推奨されている。同剤が承認されたことで「オキシコンチン錠」との組み合わせで、癌疼痛治療がより効果的に行えるようになる。
発売は、薬価収載後の2007年2月を予定している。