日本で医療機器1製品を提供するコストは、欧州に比べて約2・2~2・5倍も高いことが、米国医療機器・IVD工業会(AMDD)の調査で明らかになった。特に治験・薬事関連、営業・マーケティング費用の差が大きく、深刻な「デバイス・ラグ」の背景に、非効率な高コスト構造が横たわっている実態が浮かび上がった。
調査は、AMDDが三菱総合研究所に委託し、2008年12月~09年2月にかけて実施したもの。グローバル医療機器メーカー12社を対象に、心血管系機器(PTCAバルーン、ベアメタルステント、ペースメーカー)、整形外科系機器(人工股関節・人工膝関節)の、日本とイギリス、フランス、ドイツの欧州3カ国におけるコスト構造の違いと要因について検討された。
その結果、心血管系機器1製品のコスト構造をみると、「研究開発費・製造費」「治験・薬事・品質管理費」「営業・マーケティング費」「在庫関連費」の4項目の全てにおいて、日本は欧州と比べて約2・2倍、整形外科系機器でも約2・5倍高いことが分かった。特に日本では、営業・マーケティング費が5~6倍に上るなど、高コスト構造の大きな要因になっていることが浮かび上がった。
また、治験・薬事・品質管理費について、日本では欧米の約20倍に達することが明らかになった。その中で、PTCAバルーンとベアメタルステントの平均審査期間をみると、イギリス、フランス、ドイツは共に4・5カ月であるのに対し、日本は19・0カ月と約4倍以上も長かった。さらに、日本では苦情の割合が高く、品質管理や薬事に多くの社員が関わっているなど、医療機器の質に対する要求の高さがうかがえた。
営業・マーケティング費用が高コストとなっている背景としては、日本では、取引医療機関数が多いにもかかわらず、1施設当たりの症例数が圧倒的に少ないことが明らかになった。特にペースメーカーは年間50例以下が86・2%、人工股関節・人工膝関節は年間10例以下が83・6%と、1施設当たりの症例集積率が極めて低い実態が浮き彫りになった。また調査では、国内における医療機器販売の99・0%が卸経由である点を指摘。独自の流通構造がコスト高に影響しているとの見方を示した。
これらの調査結果を受け、AMDDは「日本の医療機関数の多さ、症例の分散化が高コスト構造をもたらしている」と分析。高い規制ハードルも非効率の大きな要因になっていると指摘した。