ツルハホールディングスは14日、調剤薬局チェーン大手「クラフト」のドラッグストア事業(HBC事業)を譲受することで、合意したと発表した。クラフトは首都圏地区で「サクラドラッグ」「Sakura」などの名称でドラッグストアを展開している。クラフトではHBC事業について、既に会社分割(新設分割)の手続きを開始しており、新設分割による設立会社「サクラドラッグ(仮称)」の全株式をツルハHDが取得し、子会社化する。関東地区の店舗展開強化を目指すツルハHDグループでは、これにより首都圏戦略に弾みをつけたい考え。株式譲渡は8月3日の予定。
ドラッグストア業界は成長産業とはいえ、改正薬事法施行による周辺業界からの新規参入の可能性も高まっており、今後ますます経営環境が厳しさを増すと予想されている。ツルハHDでも昨年来、グループの事業基盤をさらに確実なものにするため、組織体制の見直しを通じた収益獲得機会の極大化、重要戦略地域である首都圏での店舗展開や、エリア・ドミナントのあり方について検討を重ねてきた。この中で、特に今年は関東地区での出店地域や店舗種別、店舗運営会社の振り分けなどにもスポットを当て、出店政策見直しに注力していく計画を掲げている。
ツルハHDでは、クラフトの親会社であるクラフトホールディングスの株式2・67%を保有するなど、長年にわたる友好企業であるクラフトがHBC事業を分社化する準備を開始したことで、相互に事業拡大を図る可能性を探るべく、協議を行ってきた。
クラフトは、1997年から首都圏でドラッグストアの多店舗展開を始め、現在は「サクラドラッグ」「Sakura」「コスメティック・アンド・ドラッグ・サクラ」などの店名で、東京、神奈川、埼玉で19店舗を展開している。09年3月期の売上高は、前期比2億円減の35億4700万円、営業利益は82億円減の16億円。
これらクラフトのHBC事業店舗は、いずれも駅前・繁華街立地型の店舗が中心で、ツルハHDではグループ店舗網を補完するものとなり、首都圏戦略の重要な要となると判断した。今後は、新設分割設立会社「サクラドラッグ(仮称)」の株式を取得して子会社化し、ツルハグループ各社との商品調達の共通化など、利益水準の引き上げを図っていく。子会社の社長には、グループ企業リバースの常務取締役営業本部長を務め、クラフト出向(HBC事業部長代行)の河井悟氏が8月3日付で就任の予定。
ツルハHDでは「今回の株式取得が完了すると、これまで出店が遅れていた山手線内での店舗を、“点から店舗網”として再編できる。同じく出店が遅れていた横浜中南部・横須賀地区への出店が達成されることになる。さらに、従来手がけていなかった駅ビル内店舗の運営ノウハウが獲得できるなど、課題となっていた首都圏戦略が新たなステージに移ることになる。グループにとって、事業戦略を一段とステップアップさせることになると共に、今後の大きなシナジーが期待できる」としている。